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貴乃花が考える“横綱の品格”「常に追い求めなくてはいけない対象」

横綱の品格について語る貴乃花光司氏(撮影/藤岡雅樹)

横綱の品格について語る貴乃花光司氏(撮影/藤岡雅樹)

 大相撲では照ノ富士が「令和初の横綱」となった。一方、2018年10月に相撲協会を退職した貴乃花光司氏は「平成の大横綱」と呼ばれた。横綱は負け越しても番付が落ちない。だからこそ、引き際が難しい。昨年11月には横綱審議委員会が休場ばかりの白鵬、鶴竜の2横綱に「注意」を勧告した(今年3月場所で鶴竜は引退)。横綱の引き際は、どうあるべきか。現役時代の貴乃花は右ヒザの大怪我を負い、7場所連続全休を経験した後、2003年1月場所で引退した。同氏が語る。

 * * *
 横綱は「昇進」と「引退」が一直線上にあって、引退がどんどん近づいてくるという感覚です。

 初めて引退の二文字が脳裡をかすめたのは、右ヒザを負傷し、フランスで半月板の除去手術をした後ですね。手術が必要になる一因となった2001年5月場所の武蔵丸関との優勝決定戦で無理をしなければ、もっと現役を続けられたのでは、という声もいただきますが、自分としてはちょっと違う思いがある。怪我という言葉には“怪しい”という字が入っています。長年の負担で“怪しくなってきた”ところに、不具合が出るのだと思う。曙関が先に引退して、2001年9月場所後の断髪式でハサミを入れる順番を花道で待っている時に、ふと“そろそろ自分の番だな”と思いましたね。

 私が引退した場所では、2日目の雅山関との取組で大技の二丁投げを食らって左肩から落ちました(物言いがついて取り直しの末、貴乃花が勝利)。横綱がくらってはいけない大技で、“オレもここまでになったか”と土俵に尻もちをつきながら笑ってしまいました。防ぎ方はわかっていたはずなのに体が動かなかった。

 雅山関との一番の後に休場して5日目から再出場したのは、このまま辞めたくないと思ったから。体は動かないけど、できるだけ綺麗な負け方で辞めたかった。

 新横綱の照ノ富士にも、重責が待っています。ただ、横綱になってからのほうが大変と言いましたが、あまり悩みすぎずにここが力士人生の集大成になるという気概を持って全力の相撲を取ろうとすればいいと思います。その気持ちがあれば、横綱に相応しい取組になっていくと思いますし、日本とモンゴルの両方にファンが増えると思います。

〈新横綱をそう気遣った後、記者が「白鵬関の引き際についてはどう考えますか?」と聞くと、宙を睨んだまま答えなかった。今場所は部屋でコロナ感染者が出て休場となる白鵬だが、先場所は6場所連続休場明けに全勝優勝を飾っている〉

 むしろ先場所は、綱取りの照ノ富士がよくぞ千秋楽まで勝ち進んだなという気持ちでみんな見ていたんじゃないですか。

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