『ムショぼけ』は主演・北村有起哉でドラマ化((C)ABC)
沖田さんは元ヤクザ最高幹部から転身したという異色の小説家だ。獄中生活も約12年に及び、その頃から筆を握り、2016年に小説家としてデビューした。その沖田さんと藤井さんが語り合った。
沖田:実際に尼崎でドラマを撮影して、イメージは変わりましたか?
藤井:新しい街並みと、古い街並みが、雑然と混在しているなと感じました。“何十年前からあるの?”という商店街もあれば、駅前にはタワーマンションもある。広い街ですし、時代の移り変わりをいろいろ感じられました。
沖田:1995年の阪神淡路大震災で尼崎も大きなダメージを受けたんです。そのときに壊れたものは新しく建て直されたり、計画的に整備された。一方で、被害が少なかったところはそのまま。そやから、新旧の街並みが渾然一体になっているんでしょうね。
藤井:尼崎の人の気質はどうでしょうか。
沖田:一言でいえば、アマは“商売人の街”ですね。計算高いですし、セコい(笑い)。けんかっ早いところはありますが、手が出るんやなく、まず口が出る。口が悪いわけではなく、いわゆる“アゴが立つ”んです。その掛け合いは、はたから見たら“オモロイ!”となるのかもしれませんね。
そういえば今回のドラマロケでは、尼崎で撮影された初めての連ドラやということで、尼崎市長が撮影現場を表敬訪問してくださったんですよ。初めてやったから“応援してますから頑張って”と言われただけでしたけど、商売人の街やから、2回目、3回目やったら“ロケ地代を払え”って請求されたかもしれませんね(笑い)。
藤井:最近撮られているドラマの多くは、ロケは東京です。だから、いろんなドラマで同じロケ地が使い回されていて、“あのドラマもこのドラマも同じ場所か”みたいなことが多い。でも、『ムショぼけ』のドラマは、全編を尼崎中心の関西で撮ったので、最近のドラマでは見ない“新しい画”が撮れたのではないかと思っています。
沖田:いまはもう何でも東京ですもんね。私としては“自分の縄張り”として大切にしてきたアマというローカルな地域に根ざした物語を、東京を中心とした他の地域の人にも読んでほしいという思いがあります。
──ドラマでは「アマ」の空気が感じられそうだ。
『ムショぼけ』の舞台は尼崎((C)ABC)