経済界も終身雇用に難色を示す「2つの背景」
45歳定年制が本来示したかったことは、一度会社に勤めると定年まで働き続けることができるという“終身雇用”が保証できない社会に適した雇用システムのあり方だ。つまり、日本社会が進むべき方向は、以下2つのいずれなのかを検証することに本意がある。
(1)今の雇用システムの維持
定年まで雇用保障されるが、外部で通用する能力は磨かれないまま会社と一蓮托生。
(2)45歳定年制など新雇用システムへの転換
雇用保障はない、もしくは弱まるかもしれないがエンプロイアビリティ(employability:雇用される能力)が磨かれる。
どちらにもリスクがあるが、これまでの延長で考えるなら(1)のほうが安全そうだと考える働き手が多いのではないかと思う。
しかし、前経団連会長は、公の場で終身雇用を続けるのは難しいと発言した。経済界が終身雇用維持に難色を示す背景には様々な事情が考えられるが、中でも大きい理由は2つある。
1つは、第四次産業革命時代に突入したと言われる経済環境の変化スピードの早さだ。環境変化に対して柔軟に対応しながら競争力を高めていくには、会社にとって必要な人材とそうでない人材とを素早く見極め、社内だけでなく外部からも人員を募って、人員体制を柔軟に入れ替えていく必要がある。
もう1つは、年功賃金を基本とする現在の給与体制の制度疲労だ。今は、若年層の社員ほど生産性に対して低い給与が支払われている。逆に、高齢層の社員には生産性より高い給与が支払われる。
それは以前からあった課題だが、少子高齢化が進む中で高齢層の人員比率がどんどん増える方向にあるため、会社からすると、費用対効果の低い社員が今後も増え続けることになる。さらに、今後の法改正で70歳まで定年延長する可能性も出てくるとなれば、今の体制を維持していくことは難しくなっていく。
以上2つの理由だけ見ても、会社の存続難易度が上がっていることがわかる。今は安定している会社でも、突然倒産の憂き目にあうリスクが読みづらい経済環境になったということだ。