芸能

立川こはる 1年間の充電で磨きをかけたキレのある語り口と落語の地力

キレのある語り口が特徴の二ツ目・立川こはる(イラスト/三遊亭兼好)

キレのある語り口が特徴の二ツ目・立川こはる(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、1年間の充電で磨きをかけた二ツ目・立川こはるキレのある語り口と落語の地力についてお届けする。

 * * *
 この連載が始まったのは2017年の夏。当時、落語界には“二ツ目ブーム”と呼ばれる現象が起きていた。二ツ目を目当てに足を運ぶ新たなファン層の流入によって、落語界は少々浮かれていたと言ってもいい。

 だが昨年来のコロナ禍によって状況は激変。落語会の運営が難しくなったことで演者が淘汰され、“ごく一部の売れっ子とそれ以外”という二極分化が起きた。二ツ目ブームの中心にいた柳亭小痴楽、瀧川鯉八、桂宮治、三遊亭粋歌(現・弁財亭和泉)らが続々と真打に昇進した今、“客を呼べる二ツ目”はごく僅かだ。

 立川こはるも二ツ目ブームの中心にいて、真打昇進を目指していた。談志家元亡き後の立川流においては「弟子の昇進は師匠が決める」ということになっている。こはるが昇進するためには師匠である立川談春の基準をクリアしなければいけない。そのため、こはるは2020年を“自己研鑽の年”と位置付け、表立っての活動を断った。もっとも2020年にはコロナ禍が落語界を直撃したため“こはる不在”も目立たなかったが。

 今年1月に高座復帰したこはるは、5月から新宿文化センター小ホールでの独演会を再開、1年間の充電の成果を見せている。8月には27日・28日と2日連続で行ない、27日は『目黒のさんま』『棒鱈』『藪入り』を、28日は『十徳』『しの字嫌い』『化物使い』を演じた。キレのある語り口を活かした威勢のいい高座の魅力は健在だ。

 引っ越しの当日から演じ始める『化物使い』は、主人に「お暇をいただきたい」と奉公人が願い出る冒頭のやり取りが濃密で聴き応えがあるが、これは大師匠である談志の型を踏襲したもの。後半の“化物使いの荒さ”も談志がベースとなっている。『化物使い』と言えば古今亭志ん朝のイメージが強く、今では大抵の演者がその系統で演じているだけに、談志演出で聴くと実に新鮮だ。談志は自らの演出を全集として書き残しているのだから、立川流の若手はそれを活用すべきだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

連ドラの主演を2クール連続で務める松本若菜
【まさに“代打の女神さま”】松本若菜、“別の女優が急きょ降板”で10月ドラマで2クール連続主演 『西園寺さん』も企画段階では違う大物女優が主演の予定だった
女性セブン
史上最速優勝を果たした大の里(時事通信フォト)
【角界の世代交代】史上最速優勝の大の里に包囲網 最大のライバルはたたき上げの平戸海、日体大の同級生だった阿武剋・旭海雄・石崎らにも注目
週刊ポスト
33年ぶりに唐沢寿明が鈴木保奈美と共演する
【地上波ドラマでは『愛という名のもとに』以来33年ぶり】唐沢寿明、2025年1月期で4年ぶり民放連ドラ主演、共演は鈴木保奈美 テレ朝は大きな期待
女性セブン
一時は通常の食事がとれないほどだったという(7月、岐阜市。時事通信フォト)
宮内庁の来年度予算概算要求「医療環境の整備等」が約1.5倍に増額 “大腸ビデオスコープ”への予算計上で再燃する紀子さまの胃腸への不安
女性セブン
事件現場となったアパート
《東大阪・中高生3人誘拐》「事件の夜、女の子の怒鳴り声が」咳止めの市販薬を80錠使用して急性薬物中毒に…逮捕された男のアパートで目撃された“黒髪の女子学生“
NEWSポストセブン
NHKの山内泉アナ
《極秘結婚していたNHK山内泉アナ》ギャップ感あふれるボーイッシュ私服は約9000円のオシャレブランド お相手は慶応同級生…大学時代から培った「ビビットな感性」
NEWSポストセブン
不同意わいせつ容疑で書類送検された山口晋衆院議員(Facebookより)
《不同意わいせつ容疑で書類送検》自民・山口晋議員、エレベーター内キス目撃した20代女性の母親に「ガス会社の社員」を名乗った理由
NEWSポストセブン
長澤まさみ
松本潤、野田秀樹氏の舞台で共演する長澤まさみを“別宅”に招いて打ち上げを開いた夜 私生活では距離があった2人がお互いを高め合う関係に
女性セブン
三田寛子がSNSに載せた初めてのツーショットの真相
《三田寛子の誕生日ツーショット》実は「バースデー当日の写真ではない」疑惑が浮上 中村芝翫は愛人と同棲する家へ直行していた
NEWSポストセブン
妻とみられる女性とともに買い物に出かけていた水原元通訳
《買い出しツーショット》水原一平被告が痩せてロン毛に…購入した「米とビール」にみる現状の生活
NEWSポストセブン
斎藤元彦知事。職場外でも“知事特権”疑惑が(時事通信)
【まるで独裁者】兵庫県・斎藤元彦知事「どこでも仕事すべき」と論じるSNS投稿に映しだされていた「真っ白なGoogleカレンダー」
NEWSポストセブン
再婚発表に賛否両論
東出昌大、再婚の裏側 親しい知人への報告は「発表の直前」 “山暮らしの後輩女優”の1人はSNSで「勝手」と意味深なメッセージ
女性セブン