芸能

中尾彬が語る「やくざを演じるということ」 撮影中は普段の口調も変わる

深く役に入り込むことも(撮影/内海裕之)

深く役に入り込むことも(撮影/内海裕之)

 いつの時代も見るものを高ぶらせる“やくざ映画”──。それはやくざを演じる俳優にとっても特別な存在だ。坂松組の四代目跡目争いが描かれた『極道の妻たち 危険な賭け』(1996年公開)では、幹部の洲崎香矢(岩下志麻)が支持する佐渡ではなく海原を後押しする市元裕兵を演じた中尾彬。登場する度に綿棒で耳をほじる仕草も話題になった。そんな中尾に、「やくざを演じるということ」について聞いた。

 * * *
 昔のやくざ映画では、エキストラに“本物”が入っていました。撮影前、我々は4時間ぐらいかけて背中に刺青を描いてもらいますが、終わって風呂場で流していると、落ちない人がたくさんいた(笑)。ある時なんか、指名手配犯が映り込んでいて騒ぎになったこともありました。

 デビュー間もない頃から日活でチンピラ役を演じました。私の地元・木更津にはやくざが多かったから、彼らの歩き方や背中の丸まり具合を参考にしました。

 ただ、関西弁のマスターには手こずりました。イントネーションが大阪と京都、神戸で異なる。ここぞとばかりに方言指導の人が「違いまっせ」とダメ出ししてきたけど、関東の人間にはわかりゃしないよ(笑)。

 岩下志麻ちゃんの『極道の妻たち』にも何回か出ましたけど、男のやくざ役はみんな同じように見えるでしょ。だから、『危険な賭け』(1996年)ではいつも綿棒で耳をほじくって変化をつけました。

 撮影中は普段の口調まで変わるし、雰囲気も違うのかもしれません。『極妻』の時も、撮影所近くの喫茶店で5、6人で話してると誰も近寄ってこなかった(笑)。一度、刺青を落とさずに自宅に帰ったら、(妻の池波)志乃が「顔付きが違う」と。気分が盛り上がるなんて生易しいものじゃなくて、「後ろから刺されてもいい」というような覚悟が生まれるんですよ。

 東映のやくざ映画は“様式美”ですね。時代劇のように決まったパターンがあって、それがウケたのだと思います。タイプが違ったのは東宝の『ミンボーの女』(1992年)。撮影に入る前、伊丹十三監督から「東映とまったく違います」とだけ言われました。カメラのアップも多かったし、衣装も派手でネクタイ100本並べて1本選ぶほど色彩にもこだわっていた。とても面白い監督でした。

【プロフィール】
中尾彬(なかお・あきら)/1942年8月11日生まれ、千葉県出身。武蔵野美術大学油絵科に入学した1961年、日活第5期ニューフェイスに合格。パリ留学を経て、1964年に映画『月曜日のユカ』でデビュー。1983年、フランスの絵画展『ル・サロン』でグランプリ受賞。

※週刊ポスト2021年10月15・22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一
《どうなる“新宿DASH”》「春先から見かけない」「撮影の頻度が激減して…」国分太一の名物コーナーのロケ現場に起きていた“異変”【鉄腕DASHを降板】
NEWSポストセブン
混み合う通勤通学電車(イメージ)
《“前リュック論争”だけじゃない》ラッシュの電車内で本当に迷惑な人たち 扉付近で動かない「狛犬ポジション」、「肩や肘にかけたままのトートバッグ」
NEWSポストセブン
日本のエースとして君臨した“マエケン”こと前田健太投手(本人のインスタグラムより)
《途絶えたSNS更新》前田健太投手、元女子アナ妻が緊急渡米の目的「カラオケやラーメン…日本での生活を満喫」から一転 32枚の大量写真に込められた意味
NEWSポストセブン
リフォームが本当に必要なのか戸惑っているうちに話を進めてはいけない(イメージ)
《急増》「見た目は好青年」のケースも リフォーム詐欺業者の悪質な手口と被害に遭わないための意外な撃退法 
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
《セクハラに該当する行為》TOKIO・国分太一、元テレビ局員の年下妻への“裏切り”「調子に乗るなと言ってくれる」存在
NEWSポストセブン
1985年春、ハワイにて。ファースト写真集撮影時
《突然の訃報に「我慢してください」》“芸能界の父”が明かした中山美穂さんの最期、「警察から帰された美穂との対面」と検死の結果
NEWSポストセブン
歴史学者の河西秀哉氏
【「愛子天皇」の誕生を希望】歴史学者・河西秀哉氏「悠仁さまに代替わりしてから議論しては手遅れだ」 皇位継承の安定を図るには“シンプルな制度”が必要
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらっているんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
ブラジル訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《クッキーにケーキ、ゼリー菓子を…》佳子さま、ブラジル国内線のエコノミー席に居合わせた乗客が明かした機内での様子
NEWSポストセブン