芸能

中条きよし 親分役を演じてから街中で「兄貴」と声をかけられ困った

中条きよしが「やくざを演じるということ」について語る

中条きよしが「やくざを演じるということ」について語る

 日本の映画界において、いつの時代も多くの人に興奮を与えてきた“やくざ映画”。5年間に及んだ山口組と一和会の「山一抗争」をモデルとした実録映画『激動の1750日』(1990年公開)で、四代目神岡組若頭である若竹正則(中井貴一)を支える若頭補佐の成瀬勇役を演じた中条きよし。数多くのやくざ映画に出演している中条に「やくざを演じるということ」について聞いた。

 * * *
 Vシネマのやくざモノによく出ていましたけど、映画は『激動の1750日』が初めてだったと思います。山口組の宅見勝さん役でしたが、ご本人にお会いする機会があって、七三分けで銀行の部長のようでした。「これだ!」と思いました。一見優しそうな人が実はやくざだったという役作りです。本物のやくざは怒鳴り散らしたりしない。何もしなくても怖がられるので、ビビらせる必要などありませんからね。

 Vシネマの影響なのか、私を“本物”と勘違いする役者さんもいました。『新極道の妻たち 惚れたら地獄』(1994年)では安岡力也に「刺青見せてよ」と言われるし、岩下志麻さんは指を詰めるシーンの時、「どうやったらいいのかしら」と聞くんですよ。知りませんよ、そんなこと(笑)。どっちかというと、真面目なほうだと思うんだけど。

 親分役を演じてから街中で「兄貴」と声を掛けられて困りました。ある時、広島で飲み屋から出ると「ウチの親父がご挨拶したい」と呼び止められ、振り向くと三代目共政会の山田久さんでした。

 俳優を始めて数年経った頃のことですが、京都で『新・座頭市』を撮影中にケガをしてしまい、勝新太郎さんが車で病院に連れて行ってくれたんです。検査が終わると大阪に向かうので、食事でもするのかと思ったら、どこかの組事務所に入っていくじゃありませんか。驚きましたね(笑)。事務所を出るとすぐ、パトカーが追ってきました。懐中電灯で照らされて、勝さんと私だとわかったのか、「ああ、どうも。気をつけてお帰りください」って。

 やくざ役は何度も演じてきましたが、「意地と見栄は張る」という意識が常に頭にありました。自分ではよくわかりませんが、「品がある」と言ってくれる監督さんもいる。そう感じてくれて、ありがたい限りです。

【プロフィール】
中条きよし(なかじょう・きよし)/1946年3月4日生まれ、岐阜県出身。1974年、「中条きよし」としてのデビュー曲『うそ』が大ヒット。同年、『NHK紅白歌合戦』初出場。俳優としても、時代劇『必殺シリーズ』の三味線屋の勇次役などで人気を博す。

※週刊ポスト2021年10月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《異なる形の突起物を備えた光沢感あるグローブも…》10代少女らが被害に遭った「エプスタイン事件」公開された新たな写真が示唆する“加害の痕跡”
NEWSポストセブン
「みどりの『わ』交流のつどい」に出席された秋篠宮家の次女、佳子さま(2025年12月15日、撮影/JMPA)
佳子さま、“ヘビロテ”する6万9300円ワンピース 白いジャケットからリボンをのぞかせたフェミニンな装い
NEWSポストセブン
オフシーズンを迎えた大谷翔平(時事通信フォト)
《大谷翔平がチョビ髭で肩を組んで…》撮影されたのはキッズ向け施設もある「ショッピングモール」 因縁の“リゾート別荘”があるハワイ島になぜ滞在
NEWSポストセブン
愛子さまへのオンライン署名が大きな盛り上がりを見せている背景とは(時事通信フォト)
「愛子さまを天皇に!」4万9000人がオンライン署名、急激に支持が高まっている背景 ラオス訪問での振る舞いに人気沸騰、秋篠宮家への“複雑な国民感情”も関係か
週刊ポスト
群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン
ネットテレビ局「ABEMA」のアナウンサー・瀧山あかね(Instagramより)
〈よく見るとなにか見える…〉〈最高の丸み〉ABEMAアナ・瀧山あかねの”ぴったりニット”に絶賛の声 本人が明かす美ボディ秘訣は「2025年トレンド料理」
NEWSポストセブン
千葉大学看護学部創立50周年の式典に出席された愛子さま(2025年12月14日、撮影/JMPA)
《雅子さまの定番カラーをチョイス》愛子さま、“主役”に寄り添うネイビーとホワイトのバイカラーコーデで式典に出席 ブレードの装飾で立体感も
NEWSポストセブン
12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン