10月7日22時41分、千葉県北西部を震源に地震が発生。埼玉県川口市や東京都足立区などで震度5強、そのほか関東の広い範囲で震度5弱の揺れが観測された。震源の深さは75km、地震の規模を表すマグニチュードは5.9と推定される。東京23区や埼玉県で震度5強を観測したのは、東日本大震災以来だった。
鉄道への影響も大きく、日暮里・舎人ライナーが脱輪したほか、山手線など首都圏の在来線16路線で運休や大幅な遅れが発生。駅には帰宅難民があふれ、タクシー乗り場には長蛇の列ができた。
線路に降りると感電死する
もしも、電車内で被災した場合は、どうすればいいのか。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんはこうアドバイスする。
「まず危ないのは、急ブレーキがかかる瞬間です。揺れを感じたら、衝撃で飛ばされないように、つり革や手すりにつかまり、体を固定してください。座席についている場合は両足を床につけて踏ん張り、手やかばんで頭を覆って守りましょう」
電車が停止した後も油断はできない。空調が停止して、灼熱状態や極寒状態になる可能性がある。
「夏場であれば可能な限り衣服を脱ぎ、こまめに水分補給を。冬場であれば、すき間風が入り込まない場所に移動したり、防寒具を身につけたりして、体温が下がるのを防いでください」(和田さん)
窓やドアをこじ開けて、逃げればいいと思うかもしれない。しかし、むやみに外に出ると線路脇の高圧電流に接触して感電死したり、横を通る電車に轢かれたりする危険がある。必ずアナウンスを待ってから行動したい。ただし、例外もある。
「2011年5月に発生したJR北海道のトンネル火災では、係員からの指示がなく、乗客が自己判断で脱出し、大きな被害を免れました。津波や火災の煙が迫っている場合、ガラスを割ってでも脱出しましょう」(和田さん)
24時間もトイレをがまんできない
エレベーターも、対策を覚えておきたい場所だ。国土交通省の発表によると、7日の地震ではエレベーターに閉じ込められるケースが28件発生したという。
町田隆さん(仮名・28才)は、会社帰りに寄ったスポーツジムで汗を流し、帰宅するところだった。ジムが入るフロアからエレベーターに足を踏み入れ、動き出した瞬間だった。スマホから地震を知らせる警戒音が鳴り、それとほぼ同時に、エレベーターが停止。非常ボタンを連打するも、通話中でつながらない。スマホでビルの管理会社に連絡したが、1時間経っても救助は来ない。「このまま落下するのでは……」と悪い想像ばかりが頭をかすめ、パニックに陥りそうだったという。スマホの充電も少なくなり、飲み物もない。ジム帰りの汗ばんだ体に、冷汗が流れた。
首都直下型の地震が起きた場合、最大1万7000人がエレベーターに閉じ込められると予測されている。決して他人事ではない。
「揺れを感じた瞬間に、進行方向のすべての階のボタンを押すと、近い階で停止する可能性があります。それでもダメなら、非常ボタンを押し、管理会社の助けを待ちましょう。巨大地震の場合、多くのエレベーターが停止し、救助されるまで1日以上かかることも考えられます」(和田さん)
最もとってはいけない行動は扉を開けて脱出しようとすること。扉や上部の脱出口は内側から開けられない仕組みになっており、動けば動くほど体力を消耗するという。
さらに、長時間にわたって閉じ込められた場合、問題となるのが「トイレ」だ。同乗者がいないとは限らない。あと30分、あと15分とがまんを重ねたが、扉は開くことはなく限界に―同乗者は何も言わないが、においは嘘をつけない。あまりの恥ずかしさに、命が助かっても、人生最悪の日になるかもしれない。
最近では、携帯トイレなどの防災用品が備えてあるエレベーターもあるが、まだまだ少ないのが現実だ。防災アドバイザーの国崎信江さんは次のようにアドバイスする。
「長時間、助けが来ない場合は、覚悟を決めて緊急トイレをつくるしかありません。まず、同乗者に尿意をがまんできないことを説明しましょう。その後、エコバッグやビニール袋などを2枚以上重ねて底にティッシュペーパーや生理用品などを敷き、袋の中に排泄します。トイレを済ませたら、排泄物の上からティッシュペーパーなどを重ねて水分を吸収し、袋の口をきつく縛りましょう。さらに、袋の上に服やタオルをかぶせると、においを軽減できます」