後になって、本人たちの話から、詳しい経緯が伝わってきました。最初は4月頃に更衣室の窓の目隠しシートが少し剥がれている穴を見つけて部員たちがのぞきを始め、その後、部員のうち1人が部室に置いてあった女子更衣室の鍵を持ち出し、下級生部員2人に外を見張らせて、もっと見えるように穴を広げていたというのです。ちょうどその穴の前あたりで着替えていたのがうちの娘です。普通の体育の着替えは、下着はつけたままですが、柔道のあとは全部脱ぐことになり、それをすべて、何度ものぞかれていたのです。それを知った娘は家でずっと泣いていました」
「道場に行ったら震えが止まらなかった」
その後も、Aさんと母親は学校側の対応に不信感を募らせていったという。
「こういう時代ですから、スマホなどにのぞかれた時の娘の画像などが残っていないのか。当然、心配で仕方がありません。学校の説明では携帯電話をすべて調べて、画像がなかったといいますが、誰が確認したかの説明もない。専門家が隠しファイルまで徹底的に調べたならまだしも、こんな杜撰な調べ方で、とても納得できません」(Aさんの母親)
同じ学校で顔を合わせるのが耐えられないと感じたAさんと母親は、のぞき穴を広げる際に関わった3人の退学処分を求めたが、女子更衣室に入って穴を広げた部員1人が退学となり、残りの部員は停学処分にとどまったという。
同校の柔道部は男女とも近畿大会に進出する強豪として知られるが、部員の数は10人強で、Aさんの母親は「のぞきの現場を押さえられた7人を全員退学にしたら対外的にも大事になる。そのため処分される人数が制限されたのではないか。停学も名ばかりで、別室で課題をする特別指導だそうです。いずれ何事もなかったかのように加害者の生徒に今まで通り部活をさせようとしているのではないか」と不信の念を口にする。
Aさんの心の傷は深い。問題発覚後にのぞきをはたらいた部員たちに宛てて送ったという手紙の写しを見ると、そこには悲痛な思いが綴られている。
〈あの日から毎日このことをかんがえて何で私がこんな目にあわなあかんの。時間をもどしてほしいです。ここで柔道やらんといたらよかった〉