言葉を大切にする野村氏の教えをもとに、高津流の心遣いを加えた「言葉の使い分け」が選手の心を掴み、チームを飛躍させたのだろう。
しかし、野村ヤクルトで4番打者として活躍した広澤克実氏は、「まだ今の段階で高津が野村野球を継承したとは言えない」と語る。
「野村監督の最大の凄みは短期決戦の強さです。野村監督は徹底的に相手を分析して対策を練り、時には奇策をひねり出したので、“監督同士の手腕はウチの監督が1枚も2枚も上だ”という安心感がチームにありました。
短期決戦の勝敗を分けるのは監督の手腕です。高津監督が野村チルドレンとしてどんなマジックを見せてくれるのか、この先のクライマックスシリーズや日本シリーズで真価が問われます」
かつて野村氏は、「名将の唯一の条件は選手やコーチからの信頼」と語った。高津氏はこの先の短期決戦でチームから真の信頼を得られるのか──その答えが出るのは間もなくだ。
※週刊ポスト2021年11月5日号