離乳食を食べさせる。「娘は好き嫌いなく何でも食べてくれます」(和さん)

離乳食を食べさせる和さん

〈2020年5月7日(木)
 両卵巣転移だった。片方(の腫瘍)は10cmごえの大物。腹水も少し増えてた。不安ね。明日から入院して抗がん剤再開するって。一応、もう18週だし、子供に影響することはなさそう。
 でもこのままだとやっぱり28週くらい。うまくいっても30週くらいには産むことになりそう。辛い。ベビのためになることをしたい。あと、子供だけじゃなくて私も無事でいたい。〉

 2020年7月、和さんは27週、帝王切開で娘を出産。幸い母子ともに無事だった。

「和と娘のどちらかが助からないかもしれないと言われていたので、本当に安心して泣きました。和は『か細かったけど産声が聞けてうれしかった』とすごく喜んでいました。2か月後に卵巣の摘出手術をしたのですが、腫瘍の重さが娘の980gの約3倍で……。娘3人分の腫瘍を抱えて出産したと思うと、和は本当によく頑張ったと思います」

 娘という存在ができてから、和さんにとって日記をつけることの意味も少しずつ変化していった。そして日記をまとめた本の出版を考え始めたという。

「娘のために、和がどんな人間で、何を考えて出産に臨み、病気と向き合ったのかを形に残せたらいいねという話をふたりでしました。それと、和は病気になってからもずっと仕事をしたがっていたので、“本をつくるという仕事なら、体調と相談しながらできるんじゃないか”と語り合いました。

 最終的に、和を中心に書き進め、ぼくが窓口役になって、娘のために本をつくろうと決めたんです」

 今年2月、本格的に出版のための準備が始まった。

〈2021年2月6日(土)
 20時から初Zoomで取材。いまの時代すごいね。
 娘が産まれた時の気持ちをちゃんと誰かに話した事なかったから、ちょっと緊張した。いい形で娘に残せたらいいな。〉

 和さんの育児や闘病を伝えた本誌・女性セブンの記事は反響を呼び、和さんの生き方に共鳴する読者から、応援の手紙やプレゼントが続々と届いた。

「和は驚くと同時に、とても喜んでいました。皆さんからのお手紙は、入院などつらいときによく読み返していたので、心の支えになっていたと思います」

今が一番しんどいけど一番幸せですごく楽しい

 この4月、和さんは新たな治療の可能性を模索するため東京に移り住んだ。

 しかし、東京のがん専門病院に転院するタイミングで、腸閉塞になり、青森に戻って人工肛門(ストマ)造設手術を行った。東京に戻った5月には、がんの腫瘍が尿管を圧迫したので、尿を外に出す腎ろう造設手術を行った。

 満身創痍の和さんに、医師は余命宣告をした。

〈2021年5月26日(水)
 退院前最後の先生との面談。予想通り永くない話された。余命は数週間単位って言われた。〉

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