それでも和さんは「普通の生活」を諦めなかった。
「体力的に娘を抱っこするのは難しかったけれど、あやしたり、一緒に遊んだりしていました。和は料理が大好きだったので、離乳食やぼくのご飯を作ってくれました」
〈2021年5月29日(土)
今までの人生生きてきて、今が一番しんどいけど一番幸せですごく楽しいかもしれない。些細なことがものすごく大きな幸せに感じる。
ご飯作ったり、掃除ができたり、娘を抱きしめられたり、成長を喜べたり、何気ないことが本当に全て大きな幸せ。
家族も友達もみんながすごく私のこと考えて一緒に生きようとしてくれてる。こんなに幸せなことってないなぁ……恵まれてるな。みんなのためにも生きたいな。〉
ふたりは、セカンドオピニオンを利用しながら、治すための治療ができる病院を探し続けた。6月、抗がん剤治療のできる病院が見つかり、和さんは治療に励んだ。
そして今年7月、娘が1才を迎えた。
〈2021年7月10日(土)
娘の誕生日パーティーの日。朝パッパァって呼んだ。はじめてはパパだったかぁー。
朝ご飯の時機嫌悪かったから大丈夫かなって思ってたけど、可愛いドレスに着替えたらご機嫌になってくれてよかった!
来年もお祝いしたいなぁ。
1年前の今日は初めて娘に会えた日! あまりにも小さすぎて本当に心配だったなぁ。すくすく健康に育ってくれて本当に感謝だなぁ。一生懸命生きてくれてありがとう。これからもよろしくね。〉
8月、日記をまとめて本にする作業が始まった。
「結婚した記念日の12月に本を出すと決め、和は改めて頑張ろうと思ったみたいです。
体調はよくない日の方が多かったと思います。それでも和は日記を書き続け、リモート取材や打ち合わせをこなしていました。昔の日記を読み返して、当時を懐かしんだり、娘とぼくと3人で生活できていることに感動したりしていました」