田村さんは4人兄弟の三男で、同じく俳優の長兄・高廣さんと、四男の亮さんとともに「田村3兄弟」と呼ばれた。兄弟の中で別の道に進んだ登司麿さんを、田村さんは気にかけてくれていたという。
登司麿さんが明かす。
「私は80才を過ぎたいまも、老人ホームの清掃員として働いています。年齢的にも体力的にもきつい仕事をしているので、正和は生前、いつも心配してくれていたんです。優しいんですよ、あいつは……。
向こうで心配しているだろうから、『仕事はきついけど、元気だよ』って報告したかったんです。あいつが好きなピノ・ノワール(赤ワイン)を墓前に持っていって、2人で飲んだんですよ。スマホでファド(ポルトガルの民族音楽)を流しながらね。アマリア・ロドリゲスっていう女性歌手がお気に入りでね。以前、うちに来たときに、『雰囲気がある曲だね』なんて言っていたから、また聴きたいんじゃないかなぁって思ったんですよ。こんなに早く逝ってしまうなんて思ってもいなかったから、まだ話したいことがいっぱいあった……。飲みながら、あっという間に1時間が過ぎていましたね」
田村さんの死から半年たったいまも、登司麿さんは現実を受け止めきれずにいるという。
「いつまでたってもさみしさは消えないんですよね。あいつが出ているドラマの中で『そうか、もう君はいないのか』(2009年・TBS系)が私はいちばん好きなんですが、あいつは妻役の富司純子さん(75才)に先立たれる夫を演じていて、『そうか、もう君はいないのか』ってつぶやくシーンがあるんです。まさにいま、私はそんな気持ちで……。さみしくなったら、また会いにいって話をしたいなと思っています」
言葉数は少なくとも周囲に対する思いやりと優しさにあふれていたという田村さん。こだわりの墓で果たした兄との再会を、田村さんもきっと喜んでいることだろう。
※女性セブン2021年11月25日号