そんな京大の練習風景はまさに個性的。内野手のノックの横で、投手陣は黄色いプラスチックの矢を投げたり、立ち幅跳び・高跳びをしたり。冬場にはフットサルや、選手によってはメンタル改善のために座禅に取り組む選手もいるという。
水口が説明する。
「ユーチューブの動画を漁って、常に新しい練習法を探しています。効果が大きいのはウエートトレーニング。重量を上げるのはもちろん、野球に直結すると思ったトレーニングはLINEなどで共有しています」
躍進の2つ目の理由は、データの活用だ。2019年に初の「データ班専任部員」として入部した3年生の三原大知(22)がキーマンだ。
三原は野球経験が全くない自称「投球オタク」。父の影響で根っからの阪神ファンだったが、中学の時にアメリカの投球データサイトを利用するようになり、投球を数値で分析することにハマった。
「灘高校では生物部だったのですが、大学では大好きな野球に何かしらの形で携わりたかった。野球部のビラを見て部室に行ったら、青木さんが“未経験だからこそ、絶対におまえは必要や”と言ってくれました」(三原)
三原は最新の投球・打球測定器「ラプソード」を使用して、回転数や回転軸など細かいデータを記録。日頃の練習中から、投手陣にフォームや投球術のアドバイスを送る。タブレット片手にジーパン姿でグラウンド上を動き回る三原の姿は、一見すると異質だ。
「投手陣には、自分の投げている球が本当に“有効なボール”なのか、つまり打者にとってイヤな球なのかということを客観的に知りたいという選手が多いんです。僕は今の3年生なら3年分のデータを全て集計しているので、数値を軸に例えば“今日はいい時と比べて回転軸がシュート気味になっている”“フォームを変えてから、回転数が上がっている”などとアドバイスできる。未経験ですが選手は真剣に聞いてくれる。『オタク』冥利に尽きます」(三原)