発砲事件直後の日医大病院(2002年/時事通信フォト)

発砲事件直後の日医大病院(2002年/時事通信フォト)

 住吉会・幸平一家系矢野睦会の組長だった矢野治は犯行を認めなかったが、櫻井氏が引き出した日医大事件の実行犯の供述により、2008年に死刑判決が言い渡された。

 ところが8年後、矢野は再び世間を騒がせる。獄中から弁護士を介して手紙を受け取った『週刊新潮』によるスクープ記事がきっかけだった。警察がまだ把握していない殺しがある。それも2件。遺体は山に埋めたと、突如語り始めたのである(※2)。

【※2/1990年代後半に行方不明になっていた2人を、矢野が「自分が殺した」と告白。捜査の末、2人の白骨遺体が発見された後、矢野は2020年1月26日に東京拘置所内で自死した】

 警視として、新宿署の組織犯罪対策課長などを務めていた櫻井氏は2016年、警視庁組織犯罪対策第四課の管理官に就任。矢野の告白事件を担当、指揮することになった。

「矢野ってのは、なんといいますか、いわゆるヤクザ者とも違う狂気を秘めた人間です。自分を守るためなら、配下の組員もすぐに殺してしまう。捜査の中で矢野の若い衆から話を聞きましてね。『こいつは生かしておいてもしょうがない』と言って、矢野が自分の配下に強いシャブを打って殺して、埋めたと。首都圏の山林にはまだまだ、殺されたホトケたちが眠っていると確信しています」

(第3回につづく)

【プロフィール】
櫻井裕一(さくらい・ゆういち)/1957年、東京都生まれ。元警視庁警視。1976年、警視庁入庁。新宿署組織犯罪対策課課長、警視庁組織犯罪対策第四課管理官などを歴任。2018年、退官時に「警視総監特別賞(短刀)」を受賞。2020年、「STeam Research & Consulting」を設立。現在、飲料メーカー「伊藤園」の渉外業務にも従事。新刊は『マル暴 警視庁暴力団担当刑事』(小学館新書)。

※週刊ポスト2021年12月10日号

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