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東京都で唯一鉄道がない「市」である武蔵村山市が鉄道の特別展を開く理由

村山軽便鉄道を走っていた24ドイッツ製7tディーゼル機関車

軽便鉄道を走っていた24ドイッツ製7tディーゼル機関車

 東京都は鉄道が張り巡らされており、路線図は面白いほど複雑だ。しかし、伊豆・小笠原諸島などの離島と多摩エリアの1市1町1村には線路が通っていない。そのうち、狭山丘陵を挟んで埼玉県と接している武蔵村山市の総人口は7万1947人(2021年11月1日現在)。通勤や通学のために市外へ通う市民も多い。そんな武蔵村山市だが、過去を遡ると鉄道が走っていた時代があった。ライターの小川裕夫氏が幻の「軽便鉄道」や計画されながらも実現しなかった武蔵村山市関係の鉄道についてレポートする。

 * * *
 東京都武蔵村山市は昨年に市制施行50周年を迎えた。武蔵村山市は、東京では鉄道が走っていない唯一の市として知られる。そんな鉄道のない武蔵村山市の歴史民俗資料館で2021年10月23日から2022年1月16日まで「武蔵村山と鉄道―明治から令和まで―」と題する特別展が開かれている。

 各地の歴史系ミュージアムや郷土資料館では、たびたび鉄道関連の企画展や特別展が開催されてきた。それは鉄道が人気の高いコンテンツであることを裏づけるが、そもそも鉄道が走っていなければ、企画展・特別展を開くことはできない。なぜ、武蔵村山市歴史民俗資料館は鉄道の特別展を開催できたのか?

「現在、武蔵村山市内に鉄道は走っていませんが、過去には軽便鉄道と呼ばれる鉄道が走っていました」と説明するのは同館に学芸員として勤務し、特別展を企画した高田春香さんだ。

 武蔵村山市域には多摩湖の通称で親しまれる村山貯水池があり、近隣にも狭山湖の通称で親しまれる山口貯水池がある。大正期、東京の人口が急増したことで東京では水問題が深刻化する。村山・山口両貯水池は東京の水問題を解決するため、大正末期から昭和初期にかけて計画・建設された。

 両貯水池の工事を担当した東京府東京市(当時)は、資材や作業員を運搬する目的で鉄道を計画。こうして建設されたのが、これまで幻とされてきた軽便鉄道だった。

特別展開催で軽便鉄道の資料が集まるかも

 実は、軽便鉄道の存在そのものは知られていた。しかし、その詳細までは解明されていなかった。

「軽便鉄道の実態の調査は、当館の前任者が資料を収集するなど地道に取り組んできました。その成果は、2010年に『武蔵村山の軽便鉄道』という展示会で報告がされています。2010年は着任前なので、当時の特別展に私は関わっていません。しかし、前任者から話を聞く機会はあり、特別展を実施した後も埋もれていた軽便鉄道の関連資料を集めていたのです」(同)

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