軽便鉄道が走った線路跡は、現在も一部が残り自転車道として活用されている
高田さんの専門分野は織物関係で、特に武蔵村山市の名産品でもある村山大島紬を研究しているという。そのため、鉄道に高い関心があったわけではない。
それでも鉄道の特別展を企画した理由は、「昭和30年代に武州鉄道という武蔵村山市域を通る鉄道路線が計画されたことがあります。ところが、それらの資料は市役所にもほとんど残っていません。それよりも昔に走っていた軽便鉄道の資料も歳月とともに失われてしまうかもしれないと危機感がありました。そのため、このタイミングで特別展を開催すれば、それを理由に軽便鉄道の資料を集められるかもしれないと考えたからです」（同）
高田さんは、とにかく資料の収集や保存することを一心に考えてきた。今回の特別展では、貯水池建設で活用された軽便鉄道のほか、計画だけで終わった村山軽便鉄道や阪東鉄道といった知られざる鉄道計画も展示されている。村山軽便鉄道は、貯水池建設で使われた鉄道と似た名称だが、まったく別の鉄道計画だ。村山軽便鉄道は、1913年に吉祥寺駅から武蔵村山市域を通って八高線の箱根ケ崎駅へと至るルートで計画された路線。阪東鉄道とは、明治末期に東京都八王子と群馬県大間々（現・みどり市）を結ぼうと計画された路線だ。
阪東鉄道の発起人たちは、生糸・絹産業で栄えた大間々と八王子を鉄道で結ぶことで生糸・絹の輸送を迅速かつ円滑にすることを考えていた。その阪東鉄道は、武蔵村山市域を通る計画だったようだ。
武蔵村山市では、戦後に丸ノ内線を武蔵村山市域にまで延伸させる計画があった。また、西武鉄道の武蔵大和駅から分岐する形で武蔵村山市を通って拝島駅までを結ぶ支線計画も記録として残されている。それら未完に終わった鉄道計画も今回の特別展でお披露目されている。
多摩都市モノレールの延伸計画
現在は鉄道が走っていない武蔵村山市だが、特別展の準備を進めていた昨年、東京都は多摩都市モノレール線の延伸について前向きな方針を示した。
多摩都市モノレールは東京都の多摩エリアを南北に貫く約16.0キロメートルの路線で、東京都東大和市に所在する上北台駅が北端となっている。
以前から、上北台駅から北へとモノレールを延ばす計画は検討されていた。その計画が実現すれば、モノレールは武蔵村山市を通ることになる。鉄道が通ることは武蔵村山市の悲願でもあり、長らく行政・市民・企業が一丸となってモノレールの延伸計画を推進してきた。
