ラリー参戦時に見せた屈託のない笑顔(時事通信フォト)

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アイスマンは「単なるニックネームにすぎない」

 良い時も悪い時も「どうなるか見てみよう」と、ライコネンは言った。言葉だけとらえれば、突き放したようにも、諦念が漂うにも感じられる。だがライコネンの場合、「どうなるか見てみる」のは必ず、自分のやるべきことをやり切ったのちの態度だった。自分がやるべきことに集中する。自分がどうにもならないことについては我関せず。そんなライコネンのことを、敬愛する今宮純さんは「自己最速主義者」と呼んでいた。

 若きチームメイトに負けるようになっても走り続けたキャリア晩年を良く言わない人もいた。良い時に辞めるのを潔しとする考えもわかる。けれどライコネンの選択は、プライドよりなにより「自分のやりたいことをやる」姿勢を貫いた結果だったと私は受け止めている。ライコネンは最後まで楽しそうだったし、変わらず自然体だったのだから。

 多くのファンに愛されたライコネンにはよく知られた「アイスマン」というニックネームがある。ロン・デニスが付けたこの名を、「単なるニックネームにすぎない」「何だって同じだ」と受け流したところも、アイスマンの面目躍如だったが、とはいえ嫌うこともせず、自分でも使う茶目っ気がライコネンにはあった。

 天性の速さと、己以外の何にも縛られないボヘミアンな個性に恋し、一喜一憂した20年を本当にありがとう。

マクラーレン時代のストイックな走りがファンの心をつかんだ(時事通信フォト)

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普段は笑顔も口数も多いという(時事通信フォト)

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チャンピオンに輝いた時のフェラーリ公式ブック『CAMPIONI DEL MONDO 2007』(執筆者私物)

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