貴乃花の息子で靴職人の花田優一氏
古谷:テレビが狂っていくのも同じ構造です。会社にかかってくる電話はクレームばかりで「いい番組だった」と褒める電話なんてほとんどない。だけど、ツイッターなどを見ると、話題になった番組にはハッシュタグができて、いい評価も悪い評価も出てくる。いい評価だと有頂天になって、悪い評価だとがっかりする。だけど、ネットに書き込むのはほんの一部の人なんですよ。
中川:制作会社の若いスタッフなどはネットしか見ていないんですよね。昔ならテレビの関連会社は、新聞各紙や多種の雑誌を社内にそろえていたものですが、聞くと、どうも置いていないらしい。
古谷:忙しすぎて、新聞や雑誌を読む時間がないんだと思います。読まないから要らないということになったのでしょう。
中川:『サンデーモーニング』(TBS系)で野球解説者の張本勲氏が降板になったのも、ネットの声に制作サイドが耐えられなくなったんでしょう。五輪の女子ボクシングで「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね。こんな競技が好きな人がいるんだ」と発言して炎上しましたが、この「喝!」を入れるコーナーでは、毎回スポーツ新聞がネタにして、ネットに10本くらい記事が出てくる。そこに老害だの何だの批判がずらっと並ぶんですが、視聴者のほとんどは別に何とも思っていなかったはずです。
(第3回につづく)
【プロフィール】
呉智英(くれ・ともふさ)/1946年生まれ、愛知県出身。評論家。日本マンガ学会理事。近著に『日本衆愚社会』『バカに唾をかけろ』(ともに小学館新書)など
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ、東京都出身。ネットニュース編集者、ライター。近著に『炎上するバカさせるバカ 負のネット言論史』(小学館新書)
古谷経衡(ふるや・つねひら)/1982年生まれ、北海道出身。文筆家。日本ペンクラブ正会員。近著に『敗軍の名将 インパール・沖縄・特攻』(幻冬舎新書)
※週刊ポスト2022年1月14・21日号