影のある役に挑む間宮祥太朗
今回のドラマでは相手役にも恵まれた、と言えそうです。
一発屋のミュージシャン・芦田春樹を演じている間宮祥太朗さんが、新たな「暗い人格」を花開かせてなかなかの味わいです。新曲が書けず鬱々と悩む芦田は、「人の感情というものがわからない」と自覚している。言葉は少なく顔はうつむき加減で表情も乏しい。恋愛経験もないという。
そんな芦田を演じる間宮さんの「暗さ」が新鮮です。歌もうまくメロディラインにニュアンスを込めていて、悩めるミュージシャン役にぴたりハマッています。
その芦田が、実は花枝が好んで聞いてきた“勝負曲”の作者だとわかり、二人は運命的な出会いをする。そしてレッスンを始めるように「恋という課題に取り組む」ことを約束する。期限は2ヶ月。なぜなら花枝が2ヶ月後に手術をし耳が聞こえなくなるかもしれないから。芦田も2ヶ月間に新曲が書けなければ契約解除のデッドラインだから。
という、かなりわざとらしい設定。
そもそも「曲がかけなくなった音楽家」と「耳が聞こえなくなるかもしれないヒロイン」のカップリングがどこかで見たような。あるいは空手大会で優勝した日に交通事故で選手生命を絶たれてしまうとか、たまたま訪ねたクリーニング先が芦田の家だったりとか、ご都合主義的設定が多くて目につくのは如何なものでしょう?
養護施設の施設長・直美(稲森いずみ)が、花枝に「運命の人なんじゃないの?」と指摘するあたりも既視感ありあり。おせっかいな第三者の言葉によって恋に気付いて一歩踏み出す、という展開はすでに昭和ドラマで見飽きています。
おそらく今どきのドラマ視聴者は、ささやかなことで登場人物に共感したい、感情移入したい。ごく普通に生き日常の中での課題がありちょっとしたハードルが現れてまた乗り越えていく、という姿に一緒になって一喜一憂したい。
しかし、特殊な設定ありきで児童養護施設で育ったヒロインが事故に遭い危機の中で偶然、王子様が出現するという展開に、視聴者の気持ちがついていけるかどうか。今後の『ファイトソング』の評判はいかに? 清原さんと間宮さん、二人の魅力におんぶにだっこでは一抹の不安が残る。役者を応援しつつも強引な展開に戸惑いつつ、第三話以降に期待したいと思います。