原作通りのアフロヘアも話題に(番組公式HPより)
さて、多くの人が期待する中で始まったこのドラマ。キャスティングが発表された時は、菅田さんが主人公というのは「イメージが違う」という声もあったが、蓋を開ければ、ネットには菅田さんの演技を賞賛する声が寄せられた。
第1話は、整が身に覚えのない殺人事件の容疑をかけられ、刑事たちから取り調べを受けるという展開。それだけに、場面のほとんどは取り調べ室の中で、事情聴取され椅子に座ったまま。動きは少ないのに、整のしゃべらずにはいられないキャラのためセリフは長いという、演じるには難しい設定だ。
だが菅田さんは、机を挟んで刑事役の遠藤憲一さんと対峙しながら、冷静に人を観察する主人公が持っているだろう心理的距離や心の内を、椅子に座る姿勢と頭の動かし方、手の仕草でうまく演じていた。原作同様、表情の変化によって感情を露にすることはほとんどないが、話す速さや間の取り方を微妙に変え、抑えたトーンで抑揚をつけながら伝える「パラ・ランゲージ」で、整の内面の動きを表したり、息の吸い方、止め方や吐き方だけで、感情を表現してしまう。
特に、思いついたことを突然のように語り出し、疑問を相手に問いかけるセリフ回しは絶妙だ。淡々としながらも抑揚があり、疑問を投げかけながらもささやくような声でするりと相手の心の中に滑り込んだり、テンポを変えて思考を一瞬止めたりと、相手の感情を揺さぶることなく考えさせるように演じている。
シーンによってはたたみかけるように話し、ほんのわずかな声の強弱とトーンの変化で場の緊張感を徐々に高め、相手の感情を一気に沸騰させてしまう。シーンや相手によって声質を変え、ドラマの山場、クライマックスシーンではそれまでの明るい声質とは違う低く重い声で語りかける。そこに俳優陣の素晴らしい演技や演出などが重なって、あっという間に時間が過ぎる。
菅田さんという俳優は、違う役を演じる度にそれ以前の菅田将暉を越えてくる。上手い役者は引出しをいっぱい持っているという話をよく聞くが、そういう表現より、菅田さんには、毎回前の自分を上書きするような凄さがあると思う。
序盤から視聴者を釘付けにする『ミステリと言う勿れ』。今後の菅田さんの演技に期待が膨らむ。