日本高野連は早期の幕引きを図ろうとしているが……(選考委員会総会での日本高野連の宝馨会長。写真・時事通信フォト)

日本高野連は早期の幕引きを図ろうとしているが……(選考委員会総会での日本高野連の宝馨会長。写真:時事通信フォト)

「聖隷の選手たちに掛ける言葉が見つからない」

 選考委員会には「21世紀枠特別選考委員会」と「地区別小委員会」があり、地区別小委員会は「北海道・関東・東京」「東北・近畿」「東海・北信越」「中国・四国」「九州」に分かれて選考を行う。主催社の毎日新聞は1月28日付の朝刊で全選考委員の氏名を掲載しているが、どの選考委員がいかなる地区の選考にあたったかは明らかにしていない。筆者の取材によれば、東海地区の選考にあたったのは8人で、選考委員長の鬼嶋氏を含め、大学野球や社会人野球での指導者経験や甲子園中継解説で知られるメンバー、元高野連の役員などで構成されている。

 キーマンは、静岡県高野連の渡辺才也(としなり)理事長だった。渡辺理事長は、静岡県高野連の理事会が行われた1月31日の会見で、困惑した表情でこう話していた。

「いったい高校野球って何だろう。今まで信じていたものが崩れてしまった」

 東海大会で準優勝した聖隷を不選出にした選考委員会に対して、不満を抱いているような発言にも受け取れた。だが、この渡辺理事長は、実は東海地区の選考委員を務めた8人のうちのひとりでもあるのだ。その事実を知っている者からしたら、選考委員の立場を明かさずに発したこの発言は無責任にも映った。

 聖隷の加盟する静岡県高野連の理事長として、選考委員会の“中の人”であった渡辺理事長は当初、私の電話インタビューにおいて具体的な言及を避けていた。

「私は最後、聖隷さんが選ばれるのを信じていた。それぐらいしかお答えできないというか、答えようがないんです」

 東海大会の決勝が終わった昨年11月の時点で、選考委員8人の間で既に東海地区の2枠目を巡って聖隷と大垣日大とで意見が分かれていたという情報もあった。こうした経緯について質問をぶつけると、渡辺理事長は少しずつ口を開くようになっていく。

「うんうん。とにかく、鬼嶋委員長が総会やその後の取材でお話になったように、賛否分かれていたことは間違いありません。私自身は、静岡2校が選ばれると思っていました。地域性は考慮していないとも鬼嶋委員長は明言されましたが、実際、選考委員会でも静岡から2校選ばれることを避けようとする声はありませんでした。選考委員会の中身がどうであれ、結論は出した。その結論が選考委員の総意なわけですから、責任を痛感しています」

 選考のやり直しや見直しを求めるような抗議活動は静岡県高野連としてするつもりはないという。それも当然かもしれない。選考委員のひとりだった渡辺理事長が、自らも加わった決定に異議を唱えることなどできないだろう。

「(1月28日以降)日本高野連さんとはいろいろなやりとりはしています。たとえば、県民から苦情が届いていることをお伝えしたり、学校(聖隷)の状況も報告しています。あなたの記事(2月2日公開の〈聖隷クリストファー上村監督独占告白「落選で頭の中が真っ白に」〉〈聖隷クリストファー上村監督に独占取材 高野連への抗議は?〉の2記事)に書かれていたように、選手たちは応援してくれる人々の声を励みに頑張っていて、それがないと平静を保てない、つらい状況などを話させてもらっています。もちろん、聖隷さんに対して、説明が必要だという声も届けています」

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