白石哲也氏が担当した『るろうに剣心』。悲劇の結末を彩る悲壮美に満ちていた
――CGというと、「どれだけ現実と異なる映像を描くか」というイメージがあったのですが、一方で「いかにリアルに近づけるか」という思想もあるのですね。
白石:『トランスフォーマー』のようなCGバリバリの映画もいいんですが、そうではなくてクリストファー・ノーランやドゥニ・ヴィルヌーヴみたいな、「実写に見えるけど、なんでこんな映像になっているか分からない。でもなんだかリアルだ」というような作品が僕らの理想であり、追求していかなければいけないと思っています。
──今回の取材でVFXの制作にはものすごく手間がかけられていることがよく理解できました。でも「CG」というと、「パソコンでちゃちゃっと合成できてしまう」と思われがちですよね……。
白石:たしかに「簡単にできるでしょう」みたいに思われがちなんです。
――その「ちゃちゃっと」の中にどれだけの創意工夫と時間が込められてきたのか。そこは実はかつての日本映画と変わらない。白石さんのお話で多くの方にそこを知ってもらえたのではと思っております。
白石:クリエイターの想いが各所に詰まっています。それに、昔の映画にはワンカットの画に力強さがあるんですよね。ですからCGを担当しているスタッフも、たとえば昔の黒澤明監督の映画を観ながら煙の流れ方の勉強などもしているんですよ。これまでの映画の流れを汲んでCGに取り込んでいこうという想いでやっています。
◆聞き手・文/春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
【プロフィール】
白石哲也(しらいし・てつや)/株式会社Spade&Co.VFXディレクター。映画・テレビドラマのVFXを担当。代表作は『るろうに剣心』シリーズほか、『マスカレード・ホテル』『孤狼の血』『全裸監督』ほか多数。
※週刊ポスト2022年2月18・25日号