ライフ

限界の介護現場 優秀な職員の離職を止めるには何が必要なのか

PCR検査キットが不足しているため、一時的に検査なしでの「みなし陽性」という仕組みが新たに生まれた(イメージ、時事通信フォト)

PCR検査キットが不足しているため、一時的に検査なしでの「みなし陽性」という仕組みが新たに生まれた(イメージ、時事通信フォト)

 高齢者が高齢者を介護する老老介護はすっかりお馴染みの言葉だろうが、いま、新型コロナウイルス感染者が感染者を介護する「陽陽介護」が増えているという。もともと人手不足の業界で、職員は誰もが限界状態で働いていると言われているところに新型コロナウイルスが襲いかかり、いまオミクロン株でさらに追い詰められている。俳人で著作家の日野百草氏が、激務だけでなく、コロナの検査をすることを巡ってですら職場の空気が悪化し、退職スピードが加速している介護の現場について聞いた。

 * * *
「施設は辞めます。あんな地獄はもうたくさんです」

 電話口の声は憔悴しきっているように聞こえた。田山美乃さん(30代、仮名)とは1年前、別の介護取材で知り合ったがついに施設を辞めるという。将来の相談など以前から仕事に悩んでいるようだったが、限界が来たか。

「ズボンの上げ下げもできない、寝たきりの方の多い施設です。大半は重度の認知症でもあります」

 コロナウイルス、オミクロン株の猛威は政府の甘い見通しをあざ笑うかのように2月5日、日本中で10万人を超えた。重症化はしないとされてきたが、ここにきて重症者1000人、死者も100人を上回った。また約44万人が自宅療養者となっている。2021年までの「ワクチンを2回接種すれば」という目論見も崩れた。最前線のエッセンシャルワーカー、とくに美乃さんの施設は特別養護老人ホーム(特養)、重度の介護を必要とする現場だ。誰かがいなければ、施設の高齢者は放置状態となる。

「ご自身で食事もできません。そんな現場なのに罹患職員、濃厚接触職員が出勤停止ですからね、1人で20人以上を見ることになりました」

 1人で20人は酷い施設、と思う人もいるかもしれないが、これまでも筆者の知る限り普通に存在する。施設の形態にもよるが夜勤なら1人で30人という施設だってある。あくまで常勤換算なので個々の職員の労働時間でなく施設全体の平均労働時間で構わない。とにかく複雑なのだが、表向きは言わないまでも常勤換算3:1(被介護者3人に対して介護職員1人)を満たせない施設は多い。これが日本の福祉の現実である。ましてコロナ禍、離職に次ぐ離職で罹患だの濃厚接触以前に人手不足で崩壊寸前の介護施設も少なくない。

「こんなコロナで大変な時に新しく入ってくれる人なんていませんからね、出ていく一方です。私もその一人ですが」

関連記事

トピックス

川崎、阿部、浅井、小林
〈トリプルボギー不倫騒動〉渦中のプロ2人が“復活劇”も最終日にあわやのニアミス
NEWSポストセブン
驚異の粘り腰を見せている石破茂・首相(時事通信フォト)
石破茂・首相、支持率回復を奇貨に土壇場で驚異の粘り腰 「森山裕幹事長を代理に降格、後任に小泉進次郎氏抜擢」の秘策で反石破派を押さえ込みに
週刊ポスト
別居が報じられた長渕剛と志穂美悦子
《長渕剛が妻・志穂美悦子と別居報道》清水美砂、国生さゆり、冨永愛…親密報道された女性3人の“共通点”「長渕と離れた後、それぞれの分野で成功を収めている」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
2020年、阪神の新人入団発表会
阪神の快進撃支える「2020年の神ドラフト」のメンバーたち コロナ禍で情報が少ないなかでの指名戦略が奏功 矢野燿大監督のもとで獲得した選手が主力に固まる
NEWSポストセブン
ブログ上の内容がたびたび炎上する黒沢が真意を語った
「月に50万円は簡単」発言で大炎上の黒沢年雄(81)、批判意見に大反論「時代のせいにしてる人は、何をやってもダメ!」「若いうちはパワーがあるんだから」当時の「ヤバすぎる働き方」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン
“トリプルボギー不倫”が報じられた栗永遼キャディーの妻・浅井咲希(時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》女子プロ2人が被害妻から“敵前逃亡”、唯一出場した川崎春花が「逃げられなかったワケ」
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“1000人以上の男性と寝た”金髪美女インフルエンサー(26)が若い女性たちの憧れの的に…「私も同じことがしたい」チャレンジ企画の模倣に女性起業家が警鐘
NEWSポストセブン
24時間テレビで共演する浜辺美波と永瀬廉(公式サイトより)
《お泊り報道で話題》24時間テレビで共演永瀬廉との“距離感”に注目集まる…浜辺美波が放送前日に投稿していた“配慮の一文”
NEWSポストセブン
芸歴43年で“サスペンスドラマの帝王”の異名を持つ船越英一郎
《ベビーカーを押す妻の姿を半歩後ろから見つめて…》第一子誕生の船越英一郎(65)、心をほぐした再婚相手(42)の“自由人なスタンス”「他人に対して要求することがない」
NEWSポストセブン