大阪府は2月8日に医療非常事態を宣言した。非常事態を呼び掛けるため通天閣(奥)を赤色にライトアップ(時事通信フォト)
「コロナになるな」なんて言われても
オミクロンの猛威にあらゆるエッセンシャルワークの現場は限界が来ている。その中でも介護施設、とくに特養のような重度の高齢者(おおむね要介護3以上)では休めばいいというわけではない。食事も自分で摂れないしトイレにも行けない。ここでは本旨ではないため先の常勤換算で充足しているか否か、またそれによる介護報酬の問題(不正など)は置くが、やむを得ず規定に満たない人員で回さざるを得ない施設の事情もある。田山さんの例などまさにそれだ。
「気をつけていてもどうにもなりません。誰かがコロナに罹ったらそれで施設は崩壊します。私たち職員だって生活がありますから、当たり前の話ですが家に帰りますし家族もいます。買い物だって行きます。『コロナになるな』なんて言われても、どうすればいいのやら」
一部の公正世界仮説の住人は「気をつけてないから」「罹るような場所に行ったんだろう」と妄言を垂れ流していたが、もはや日本中で1日10万人の感染者という現実にだんまりだ。日常生活を送る限りオミクロンに罹患する確率は高い。ただ重症か軽症か、それだけのことだ。
「介護(職員)って中高年ばかりなんです。30代でも若手です。施設の高齢者ももちろんですが、職員も糖尿病とか、高血圧とか基礎疾患を持ってる方は多いです。それでも入所者のために仕事に出るしかないんです」
日本の介護従事者の平均年齢は45.9 歳(2020年)、30年後にはまさしく施設も「老老介護」となる。実際には多くが退職、もしくはお亡くなりになる可能性も考えれば、団塊ジュニアが後期高齢者になるころには介護職員は絶望的に足りなくなるだろう。それを補うための外国人ヘルパーやその志望者もコロナで来日しづらくなって久しい。
「日本人の若い人で介護やる人なんて少ないでしょう、少子化ですから他に仕事はありますし。中高年は行き場がないから介護の仕事、って人もいるんです。基礎疾患まみれの男性職員なんて入所者より危ないですよ、かわいそうです」
現在の施設の状況についてもっと詳しい話も語っていただいたが、地域や個人が特定される可能性が高いのでとくに触れない。ただ気になることは、もしや陽性でも働いている職員がいるのでは。筆者は他の施設でも陽性者が無症状、軽症だからと個人で、もしくは施設ぐるみでシフトをこなしている事例を耳にしている。どうなのか。
「検査キットは手に入ったり入らなかったりですからね。市のPCRは高齢者施設職員が優先的に受けられるのですが数は少ないです。いつ罹ってるか、いま罹ってるかわかりません。重篤化して、初めて『ああ、コロナだったんだ』じゃないですか」