(写真/時事通信社)

自分が脳死・心肺停止した後に、誰かのドナーになる意志を示す方法もある(写真/時事通信社)

 移植後のレシピエントは、免疫抑制剤を生涯にわたって服用し、定期的に外来診療を受ける必要がある。

「ドナーも最初は術後1か月、3か月などのタイミングで外来に通院する必要があり、その後も1年に1回は移植した病院で腎機能の推移を把握する必要があります。術前検査とは異なり保険適用なので人間ドック代わりになり、術後の診断で病気が見つかることもあります」(小林さん)

 中学1年生で慢性腎臓病を患って以来、もろずみさんには、自分の病気について、心の底からわかり合える人がいなかった。それが、生体腎移植を受けたことにより、日々、夫と腎機能の数値を伝え合い、ともに健康を気遣うようになったという。夫の腎臓を受け取り、病気を共有することで、長年の孤独が解消されたのだ。

「夫の腎臓は、まるでお守りのよう。愛おしいものがいつもお腹にいる感じで、マタニティーの感覚に近いように感じます。たとえ夫が先に亡くなっても、彼の腎臓はずっと私のお腹の中にあるので、私が生きている限り、夫との別れはありません。いまでは夫を悲しませないために、夫より長生きして彼を看取ることが私の人生の目標になりました」(もろずみさん・以下同)

 いまでこそ、そう語るもろずみさんだが、術後しばらくは、やはり、健康な夫の体から腎臓をもらい受けたことに、罪の意識があったという。無意識に「ごめんね」と口にすることが増えていた。だが、その罪悪感は、友人の言葉で吹き飛んだ。

「腎臓病の夫の生体ドナーになった友人がいます。わが家とは逆で、妻から夫への生体腎移植です。その友人に“もう、ごめんねなんて思わなくていいの。ドナー側の気持ちを言わせてもらうけど、ドナーは本当に、あなたが元気になってくれればそれでいいんだからね。申し訳ないと思っていることもわかっているんだから、もう罪悪感なんて持たないで”と言われました。

 夫が私のために決断してくれたことに、私自身がいつまでも罪悪感を抱いているのはむしろ失礼なんじゃないかと思い至りました」

 もろずみさんの夫は、術後、もろずみさんに思いを吐露した。

「はるかさんは病気で、ぼくより長生きできないかもしれなかったでしょう。だからぼくは、自分の腎臓をあげることで、ふたりの寿命をそろえたいと思ったんだよ」

 ふたりで長生きして、温泉でも行こう──腎臓を分け合ったことで、プロポーズのときの約束を、本当に果たせるようになった。

※女性セブン2022年3月3日号

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