細木数子さんら「物言うおばさん」も、いまやその多くが第一線から身を引いている(写真/女性セブン写真部)
しかし一方で、「おばさんは厚かましくて嫌だ」「ああはなりたくない」といったおばさんへの批判やバッシングも生んだ。作者の堀田かつひこさんが当時を振り返る。
「そもそもこの漫画を描こうと思ったきっかけは、街で見かけたスーパーで一円玉を1枚ずつ出してやたら時間がかかるおばさんや、束になって歩いて道行く人の壁のようになっているおばさんの姿がものすごく面白いと思ったから。私は会社の中で一日過ごすサラリーマンと違い、昼間にスーパーに行くことがあり、彼女たちと生活時間帯がかぶっていたんです。
彼女たちオバタリアンはずうずうしくて自己中心的でワガママだけど、天真爛漫で明るい面もあるし、何より言動が予測不可能でユーモラス。ぼくはオバタリアンが持つ底なしのバイタリティーを伝えたかったけれど、世間では“眉をひそめるような存在”とだけ捉えられることも少なくありませんでした。
だけどやり玉に挙げられた当のおばさんたちは『あれ、私のこと書いたんでしょ!』と街中で笑いながら声をかけてくるし、当時、政治家の土井たか子さんが選挙演説で『オバタリアンパワーで頑張ります』とアピールしたという話も聞いた。世の中のひんしゅくを物ともしない彼女たちのタフさに脱帽したことをよく覚えています」(堀田さん)
非難と注目を一気に浴びたオバタリアンだが、一大ムーブメントから30年以上たち、いまのおばさんはオバタリアンとは違うように思えると堀田さんは語る。
「当時、オバタリアンのモデルにしていたのは40〜50代の女性ですが、当時のオバタリアンと同じ年齢のいまの女性たちは服装やたたずまいがスマートで洗練されていて、立ち居振る舞いも上品で穏やかな人が多く、オバタリアンという言葉がまったく似合いません。そもそもあの頃はみんなサンダル履きに膝下の靴下でしたし……(笑い)。
こうした変化が生まれた理由の1つには、オバタリアンが闊歩していた当時は、バブル景気で社会全体に活気があったことが挙げられると思います。反対にいまは、景気も悪く世の中にも元気がない。おばさんの存在はよくも悪くもそのときの社会を映し出す面があるのではないでしょうか」
“憎まれっ子”として世にはばかり、ズケズケと物を言うオバタリアンの系譜を持つ人気者として、上沼恵美子(66才)や細木数子さん(享年83)、松居一代(64才)ら、あまたのタレントがテレビの世界で活躍したが、彼女たちの多くもいまは第一線から身を引いている。時の流れにつれて“おばさん像”も着実に変化しているのだ。
※女性セブン2022年3月10日号