博雅が一途に思う姫を救おうと動き出すと、恐ろしい出来事が次々起こる。自然現象や人ならざるものたちを、コンテンポラリーダンスなどを盛り込んだ演出で人間が体全体で表現すると、二次元の映像とは違う立体感や質感が生まれる。命が宿るのである。時に火や水を「生きているよう」と表現することがあるが、まさにそれが舞台に出てくる。その手作りの表現は、映像を見慣れた若い観客には新鮮に映っていたようだ。それも発見だった。
もうひとつ、この舞台の味は、楽器が生演奏だったこと。博雅が吹く笛と姫の琵琶の音は、物語に欠かせないもので、博雅らの動きに合わせ、生演奏されるたびに響き合う。これもまた、贅沢な演出だった。
三宅健の舞台歴を見ると、三年連続出演した『滝沢歌舞伎』をはじめ、『藪原検校』『羅生門』『炎立つ』など、V6時代から漢字タイトルが目立つ。烏帽子も似合っていたし、和物舞台の男として、また若い世代にも新鮮な名場面を期待したい。