──へえ~。
「困ることもあるんですよ。テレビ討論を関西弁でやると、視聴者から抗議の電話やメールをたくさん受けるんです。『一国の総理を目指す人間なのに、国民に失礼だ』とか。国会質疑にしても、全国から見られているわけで、関西弁がわかりにくい方もいらっしゃる。だから、標準語でやらなあかん、というプレッシャーもあり、総裁選の時も、鎮痛剤でボーッとした頭ではありながら、とにかく標準語、標準語って自分に言い聞かせながらがんばったんですよ。だけど、家で録画を見直したらかなり関西弁が入っていましたね。いやー、まだまだ未熟者ですね」
──そんな弱点があったとは……。
「実は、視力も弱いんで、これが二重苦なんです。国会質疑では机上に置いてある時計も見えない」
──近眼なんですね。今日はコンタクトレンズを入れているんですか?
「いや、裸眼で過ごしています。私、目にモノを入れるのが怖いので。しかも、肌が弱くて、メガネをかけると鼻の付け根のところが剥けるんです。メガネは、運転用と、家用を1個ずつ持っているだけ」
──家ではかけている?
「いいえ。テレビをつけていて、King & Princeが出てきた時だけ、見なきゃってパッとかけて。そういう時に使うメガネ。ドラマの時はボヤッとしていてもストーリーはわかりますから、かけない」
──政治家の場合、顔が命だから、途中からメガネをかけはじめると有権者に気付いてもらえなくなるというリスクがある。
「肌が弱くなければ、メガネ美人をめざしたいですがね。いちばん面白かったのは、本会議場でダンナ(山本拓・前衆院議員)が目の前を通って、私にニコッと笑って会釈した。その時、全然見えていなくて、完全に無視したらしいんですよ。それで『仮面夫婦』という噂がワッと広まって、週刊誌に出た。反対に、ダンナと輪郭が似た人が参院にいて、私、その人に間違えて手を振ったことがあるんです。『どうして、高市がオレに???』という感じで、その人がすごく不思議がっていたという話は、後になって知りました」
(第3回につづく)
【プロフィール】
高市早苗(たかいち・さなえ)/1961年生まれ。神戸大学経営学部卒業、松下政経塾卒塾。1993年に初当選後、衆議院では、文部科学委員長、議院運営委員長などを歴任。内閣では、内閣府特命担当大臣(3回任命)、総務大臣(5回任命で史上最長在職期間を記録)などを歴任。現在は、自民党政調会長(3期)。奈良2区選出、当選9回。
【インタビュアー・構成】
常井健一(とこい・けんいち)/1979年茨城県生まれ。朝日新聞出版などを経て、フリーに。数々の独占告白を手掛け、粘り強い政界取材に定評がある。『地方選』(角川書店)、『無敗の男』(文藝春秋)など著書多数。政治家の妻や女性議員たちの“生きづらさ”に迫った最新刊『おもちゃ 河井案里との対話』(同前)が好評発売中。
※週刊ポスト2022年3月18・25日号