国内

奈良弁で苦労、目の保養はキンプリ…「和製サッチャー」高市早苗氏の意外な弱点

高市早苗/1961年生まれ。神戸大学経営学部卒業、松下政経塾卒塾

安倍元総理についても語る高市早苗氏

 世界では続々と女性リーダーが誕生しているのに、日本ではいまだ実現していない。それほどまでにこの国の「ガラスの天井」は硬いのか──。先の自民党総裁選で岸田総理に肉薄した高市早苗・同党政調会長(61)は、日本初の女性総理候補のひとりと目される。ノンフィクションライターの常井健一氏が斬り込んだ。「週刊ポスト」の新シリーズ《女性総理、誕生!》から飛び出したスピンアウト企画。【全4回の第2回。第1回から読む

 * * *
 高市氏は初当選からまもなく30年を迎える。デビュー直後から脚光を浴び、同世代の小池百合子や野田聖子、辻元清美各氏らと並ぶ「女性政治家の代表格」として平成という時代を駆け抜けた。

 高市氏の過去のインタビューを読むと、「心の支え」となった恩人について言及するものが目立つ。営業マンの父、県警勤めの母、松下政経塾で師事した「経営の神様」松下幸之助、そして、憧れのマーガレット・サッチャー(元英首相)。その顔ぶれは男性優位の日本政治を反映していると思った。たとえば、サッチャーに匹敵する女性政治家のロールモデル(お手本)が、いまだに永田町には存在しない。

 政策論議を仕掛けようとしても旧体制を牛耳るおじさんたちは相手にしてくれない。ならば、おじさんたちを頼って理想を実現しようとするが、こんどは「“女”を使った」といって蔑まれる。女性議員を取り巻く環境は、想像する以上に落とし穴だらけだ。

 高市氏の場合、人は男社会にうまく順応したように見ている。だが、実際は多くの女性たちと同様に修羅の道を歩み、2度の落選を経験して、今がある。

──当選9回、政府・与党の要職を歴任して、名立たる大物との邂逅を重ねる中で、政界遊泳術の手ほどを受けたような「師匠」は誰に当たるのでしょうか。

「いや……。私、誰にも手ほどきをしてもらったことないんです。尊敬する女性政治家は、たとえば参院議員の有村治子さん(元行革相)や小野田紀美さん(元法務政務官)かな……」

──おふたりとも高市さんよりだいぶ後輩ですね。

「見習うべきところがいっぱいあります。有村さんは知識が豊かなうえに、言葉遣いがとても綺麗。私はうっかり期数が下の議員にタメ口をきいたりして、後で国会便覧で年上だと知って、『申し訳ないことしてしもうた!』と、後悔ばかりです。小野田さんはテキパキとすごいスピードで、わかりやすくしゃべれる。あれだけの能力があるのはうらやましい」

──高市さんの若手時代には、土井たか子さん(女性初の衆院議長)や森山真弓さん(女性初の官房長官)が現職で永田町にいましたよね?

「土井さんや、森山さんはすごいなあって見ていましたが、私はあのようにキリッとした感じにはなれない。性別に関係なく現職で最も尊敬しているのは、やっぱり安倍元総理かな。閣僚としてそばで見ていてすごいなと思いました」

──安倍さんのどういった点が?

「頭の回転の早さ。予算委員会で批判されたら、パパパパッと即言い返す。野党からは評判悪かったけど、あの反射神経のすごさっていうか、よく短時間で頭回るなあと思って。あと、かなり長い演説であっても、原稿ナシで、力強く演説をされますよね。あれは、ご自宅で昭恵さんに『うるさい!』と叱られながら、大声で練習するらしいんですが、あれだけ堂々と早口でしゃべるのは、私じゃできへん」

──そうですか?

「まず、奈良県民は割としゃべるの遅いんで。最初から最後まで関西弁でよかったら相当な速さでしゃべれるんですが、標準語で無理すると、けっこう噛むんですよ。イントネーションを一瞬考えるので、すごく遅くなるんです」

──なるほど、標準語を話している高市さんの話し方は、関西弁の時よりマイルドに聞こえます。

「たとえば、国会質疑の前に30分で収まるように、文字数を計算してパソコンに打ち込んでおくんですよ。ほんで、声を出して読んでみるんです。標準語でやると時間オーバーして、終わらへん。で、関西弁でやるとピターッとはまる。はまるどころか、時間が余る。今日はどっちにしようって迷って、無理して標準語でがんばってみて、やっぱり関西弁でやるべきだったと後悔する時もあります」

関連キーワード

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン