NHKが「公認」を与えたが、言い分は…
AIの「身体検査」も彼の仕事だった
国民的ドラマの主題歌選定の裏で何が起きているのか。取材を進めると、あるキーマンの存在が浮上した。
「外部コーディネーターのA氏です。歌手やアーティストだけでなく、NHKのドラマのキャスティングにも大きな影響力を持つという触れ込みで『NHK公認ドラマ音楽プロデューサー』と記された名刺を持ち歩いています。ここ数年はA氏を通さなければ、朝ドラの主題歌に選ばれないというのが音楽業界で暗黙の了解とされてきたのです」(前出・NHK関係者)
ドル箱の朝ドラ主題歌を獲得したい、レコード会社傘下の各レーベルのNHK担当者はアーティストの資料を携えてA氏のもとに日参し、必死に営業をかけていたという。
「その資料などをもとにNHKが水面下で話し合い、A氏がレコード会社に『このアーティストで行きたい』と名指しでオファーするのが通例でした」(音楽業界関係者)
主題歌の選定に大きな力を持つA氏はどんな人物か。別の音楽業界関係者が声をひそめて打ち明ける。
「30年以上前から芸能事務所の社長としてNHKに出入りしていた70代前半の男性です。1980年代に放送された『レッツゴーヤング』などの歌謡番組を通じて木田幸紀・前NHK専務理事の知遇を得た。2人の蜜月関係は長く続き、のちに木田さんがNHKの総局長に上り詰めると、NHK内部でA氏の存在感がますます大きくなっていきました」
木田氏は1977年にNHKに入局し、1987年に大ヒットした大河ドラマ『独眼竜政宗』の演出を担当するなどドラマ畑を歩んだ。2020年に退任するまで専務理事や総局長などの要職を歴任し、現在はワーナーミュージックの顧問を務める。A氏が朝ドラの主題歌選びに介入するようになったのは、木田氏が現場トップにいた時期と重なる。
最大の問題は、主題歌選定において“巨額の謝礼”が必要だと囁かれていることだ。レコード会社幹部が明かす。
「主題歌が決まると、レコード会社からA氏に『プロモーション宣伝費』などの名目で、1000万~1500万円程度のコーディネート料が支払われていたのです。逆に言えば、まとまった金銭を支払えないレコード会社やアーティストは選ばれる機会を失う可能性すらあるのです」
選考の過程で不自然に発生する金銭のやりとり。果たして朝ドラ主題歌はカネで買われたのか──渦中のA氏を直撃すると「ぼくが主題歌を決めているなんてウソですよ」と反論しつつ、60分にわたって内部事情を赤裸々に暴露した。まずNHKとの“蜜月”についてA氏はこう語った。
「NHKとは40年のつきあいです。ある時期、音楽関係者の違法薬物や反社会勢力との関係が問題視されたことがあり、『この人を採用しても大丈夫ですか』とNHKのプロデューサーから相談されるようになった。
そこでレコード会社の上層部にも通じていたぼくがいろいろと業界内の声を聞き、『この人は大丈夫そうです』と返事するようになったんです。プロデューサーのお手伝いをしていただけで、ぼくが『このアーティストを使いなさい』と決めたと言われるのは心外ですね」(A氏・以下同)