盗作は賞の取り消しに…
一方、17文字の制約ゆえ、必然的に似た句が生まれる可能性はある。五・七・五の言葉が全く同じものを「同一句」、発想が同じで似ている句を「同想句」と呼び、これらは審議の対象になる。
入選後に盗作や先に同じ句が作られていることが発覚するケースもある。日本旅のペンクラブが昨年主催した「第13回『旅の日』川柳」では、同一句が指摘された。
「受賞後に過去に同じ句が作られていたことが第三者の指摘で分かり、“行句を優先する”いう川柳のルールから特別賞が取り消しになりました」(広報担当者)
過去の作品を調べる手間が欠かせないわけだ。尾藤氏の挙げたポイントは別掲表にまとめた。
それでは、プロが唸った一句とはどういうものなのか。尾藤氏がベストに選ぶのは、1991年の「第5回サラリーマン川柳」大賞を受賞した次の句だ。
〈まだ寝てる 帰ってみれば もう寝てる〉
「寝ているのは奥さんで、詠み人は朝早くから夜遅くまで働いているのでしょう。遠距離通勤かもしれないし、子供が大きくなり奥さんの手がかからなくなったのかもしれない。自分のことを何も語らずに家庭の内幕が見事に伝わってくる。わずか17音で詠み人の背景が広がり、これはむしろプロには作れない味です。素人の方でもプロを凌駕する可能性があるのも川柳の魅力です」(尾藤氏)
そもそもは江戸の町人たちが遊びで始めた川柳。まずは気軽に楽しみたい。
※週刊ポスト2022年3月18・25日号