徹底抗戦の構えを崩さないゼレンスキー氏(時事通信フォト)
その声に押される形で政治未経験のまま2019年の大統領選に出馬すると、得票率70%以上という圧勝で大統領に就任した。ウクライナ第6代大統領に就任したゼレンスキー氏はすぐにつまずく。政権の中核に「第95街区」のスタッフを起用したことが“お友達内閣”と非難されて支持率が低迷したのだ。だがこのお友達内閣こそ、前述したロシア軍への善戦を支える立役者になっている。
「内閣入りした『第95街区』のメンバーは映像や情報発信のプロ集団で、イメージ戦略に長けています。大統領の効果的な力強いメッセージは、彼らによっても生み出されています」(大手紙外信部記者)
そしてもう1人、ゼレンスキー氏を支える大きな存在が、オレナ夫人(44才)だ。
2人の子供とキエフに留まる
同い年のふたりは高校時代に出会い、8年間の交際を経て2003年に結婚。2004年に長女、2013年には長男が誕生した。結婚後、オレナ夫人は「第95街区」に脚本家として所属し、コントや人気テレビ番組の脚本を手掛けてきた。
「オレナ夫人は、ゼレンスキー氏が大統領選に出馬する際、猛反対しています。夫人は自分が裏方を好む性格だということも自覚していて、“ひっそりと暮らしたい”という考えが強い女性でした。政治家の妻となれば必然的に公の場に出ることが増える。ましてや大統領夫人ともなれば、世界中に名前と顔が知られることになる。仮に選挙に勝ったとして、自分にそんな立場が務まるのかと、不安があったようです」(前出・外信部記者)
だがゼレンスキー氏が出馬の決意を固めると、オレナ夫人は考え方を一変させる。ファーストレディーになる覚悟を決め、夫のサポートに徹するようになった。見事にゼレンスキー氏が当選を果たすと、彼女は“専属のイメージコンサルタント”として、陰に陽に夫を支えていった。
「ゼレンスキー氏の出身であるウクライナ東部は、ロシア語を話す人が多く、彼自身、ウクライナ語が得意ではなかったんです。大統領を務める上で、ウクライナ語を完璧に話すことは必要不可欠。そう考えたオレナ夫人は、ウクライナ語の教師を夫につけて猛特訓させたのです。いま流暢なウクライナ語でメッセージを発信できているのは、オレナ夫人のマネジメントのおかげともいえます。
彼女はほかにも、TPOに応じた服装をアドバイスしたり、脚本家のスキルを生かしてスピーチ原稿を細かく添削することもあります。国民を鼓舞する動画のコメントも、オレナ夫人のアドバイスが反映されているようです」(前出・国際ジャーナリスト)