芸能

【追悼】宝田明さん 亡くなる3日前のインタビューで語った反戦への思い

今年4月に米寿を迎える宝田明。これまでに出演した映画は160本を超す

体調は良さそうに見えた。急逝だった(2022年3月11日撮影)

 3月14日、俳優の宝田明さんが肺炎のため都内の病院で息を引き取った。享年87。自身の戦争体験を後世に伝えることをライフワークにしていた宝田さんは、連日、凄惨なニュースが伝えられるウクライナの戦況に心を痛めていた。亡くなる3日前の3月11日、宝田さんは個人事務所の応接室で、『女性セブン』に壮絶な戦争体験を明かしていた。

 * * *
 4月1日から公開される映画『世の中にたえて桜のなかりせば』(三宅伸行監督)は、俳優生活68周年を迎えた宝田さんが企画立案から関わった意欲作。W主演の相手には、宝田さんより70才年下で人気グループ「乃木坂46」に所属する岩本蓮加(18才)が選ばれた。

「こんなに若い子と共演するのは40年ぐらい前の松田聖子さん以来じゃないかな(笑い)。岩本さんとは孫ほど年が離れていますが、知的な女性で度胸もあって、ほとんどNGを出さない。きっと大女優になりますよ」(宝田さん、以下同)

 映画で二人が演じるのは、さまざまな境遇にある顧客の手助けをする「終活アドバイザー」。タイトルは平安時代の歌人、在原業平が詠んだ桜の歌だ。

「『世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし』と続きます。いまの言葉で言えば『もし桜がなかったなら、どんなに春をのどかに過ごせるだろう』という意味でしょうか。逆説的な意味で、それぐらい桜は日本人の心を惹きつけてやみません。私にも特別な思いがあり、四年ほど前からずっと桜を題材にした映画を撮りたいと考えていました」

 映画のテーマは“終活”だ。インタビューが行われたのは3月11日。宝田さんは矍鑠(かくしゃく)としたたたずまいで、しっかりした口調でこう語った。

「自分はまだまだ働かなくてはならない身なので、終活のことはそれほど意識していないんです。撮りたい映画のアイディアはたくさんあるし、次回作の構想もあるんですけどね。ただ、これからも長年、続けてきた戦争体験を後世に伝えていくことだけは使命感を持って続けていきたいですね」

 1934年生まれの宝田さんは、父親が勤務した満鉄(南満洲鉄道)の社宅があったハルビンで幼少期を過ごし、11才の時に現地で終戦を迎えた。

「当時は『アジアのパリ』と称される美しい街でした。メインストリートにアール・ヌーボーの瀟洒な建物が並び、学校も病院も立派なものばかり。ところが、忘れもしない1945年の8月9日。長崎に原爆が投下された日に、日ソ中立条約を破ってソ連軍が国境を超えて満洲に攻め込んできたのです。この世のものとは思えないような爆音と共に、火柱がいくつも立ち上がり、ハルビンの街が一瞬で壊滅状態になってしまいました」

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン