東大の女子入学者は今も約2割に過ぎない(2020年度の入学式がコロナ禍で中止になったことを受け、昨年6月に開かれた入学者歓迎式典。時事通信社)

東大の女子入学者は今も約2割に過ぎない(2020年度の入学式がコロナ禍で中止になったことを受け、昨年6月に開かれた入学者歓迎式典。時事通信社)

「東大女子お断りサークル」と「男尊女卑ルール」

 もっと早い段階での生きづらさを口にした人もいた。

 脳科学者の中野信子(1998年工学部卒)は子どもの頃、勉強ができても母親に良い顔をされず、むしろこう言われたという。

「女性が学歴をつけても結婚できないね」

 元衆議院議員の豊田真由子(1997年法学部卒)もまた、厳格な父に褒められたことがないどころか、男の子がほしかったと言われて「申し訳ないという気持ち」を抱えて育ったと語った。

 経歴だけを見れば“違う世界”にいるような彼女たちだが、実は、この社会で多くの女性が味わってきたような苦悩にぶつかっていたのだ。逆に言えば、日本の大学の最高峰に入るような優秀な女性たちでも、努力だけではどうにもならない壁に直面してきていた。

 そうした壁を、ある意味で象徴するようなワードが「東大女子」かもしれない。

 東大女子とは、学内で一般的に使われている女子学生の総称だが、学外にも知られるようになったのは、上野千鶴子・東大名誉教授による2019年度学部入学式の祝辞がきっかけだろう。上野は祝辞の中で、いわゆる「東大女子お断りサークル」について言及した。東大男子と他大女子のみで構成されるインカレ(インターカレッジ)サークルのことだ。

『東大女子という生き方』に登場する女性(2008年工学部卒)は、在学中、テニスサークルが100はあったのに、東大女子が入会できたのは学内サークルと呼ばれる3つだけだったと証言している。それ以外はすべてインカレサークルで、実質的に「東大女子お断り」だった。

 こうした用法からもわかるように、東大女子という呼称は、男性目線のネーミングだった。あってもおかしくない「東大男子」という言葉は、現在20代の卒業生に聞いても一般的ではなかったという(上野の祝辞にも出てこない)。

 つまり東大生の中で、女子だけを別枠でくくる文化が根づいてきたのだ。

 そういう文化が端的に表れていたのが、東大の体育会系サークルや運動部だ。「東大女子お断り」のインカレサークルについて卒業論文をまとめた女性(2020年教育学部卒)は、善良な東大男子が「気持ち悪い」と漏らすほどの実態を明るみに出した。

 たとえば、「食事作りやお酌、練習後に行く飲食店のドアの開閉に至るまで、ご飯にまつわるものはすべて女子の役割、といった“男尊女卑ルール”がある」というもの。男尊女卑ルールという露悪的な名称は、インカレサークルの男子が自ら用いた言葉だった。

 東大男子だけが主要幹部になれる「男子中心運営」や、他大女子への「バカいじり」が定番だという声も、複数のサークルであった。彼らは「伝統」を盾に東大女子を排除していたが、「東大女子が入ると男子が実権を握りづらくなる」という本音も聞かれたという。

 学内サークルとインカレサークルを掛け持ちしていた東大男子の一人は、東大女子と他大女子が「棲み分け」できているからいいじゃないか、と語ったそうだ。こういう言葉が差別意識なく飛び出すあたりにも、東大という男社会で男性主体に慣れきっていることが滲む。

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