ライフ

SNSで話題の岡本真帆氏が第一歌集発売 31文字で表す“幸せ”への思い

岡本真帆氏が新作について語る

岡本真帆氏が新作について語る

【著者インタビュー】岡本真帆氏/『水上バス浅草行き』/ナナロク社/1870円

〈一見無駄のように思える、なくても生きていけるもの。そういう存在が、私を生かしてくれている〉と、〈あの短歌のひと〉、岡本真帆氏は第一歌集『水上バス浅草行き』の後書きに寄せている。〈水上バスは、浅草に急いで向かうための乗り物じゃない。むしろ、乗らなくてもいい。そんな乗り物。〉と。

「あの」とあるのは、昨今裾野が広がりつつある短歌ファンの間で彼女が注目の存在だから。それこそ卑近過ぎて取るに足らないようなモノやコトを、岡本氏は効率性重視の日々を生きながらも丁寧にすくい取り、短歌の形に留めおくのだ。

〈ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし〉
〈平日の明るいうちからビール飲む ごらんよビール これが夏だよ〉

 等々、それは作者固有というよりは、誰もの記憶や疵を広くくすぐる、開かれた装置だったりする。

 歌人の普段の顔は会社員。前職のコピーライター時代にたまたま手に取った歌集に魅せられ、以来、短歌は日常の一部になった。

「特に笹井宏之さんの『えーえんとくちから』と木下龍也さんの『つむじ風、ここにあります』ですね。当時、社会人3年目で、コピーの仕事では死ぬとか妬むとか、負の表現は積極的には使えないのに、短歌はなんて自由なんだと。笹井さんの歌は独特の世界観を現出させる詩の力が物凄く、自分も是非やってみたいと、見様見真似で作歌を始めたのが2014年頃でした」

 元々表現に興味はあったものの、学生時代は手法を見出せず、模索を重ねた。

「私は絵が描けるわけでも、写真がうまいわけでもない。表現したいのに何も持ってないと思って、コピーライターの養成講座に通ったりしました。あとはツイッターです。140字の中で映画や本のここが好きとか、自分の考えや思いをどう表現すれば届くのかを考えるのが楽しくて、一時はツイ廃(ツイッター廃人)同然にハマっていました(笑)」

 その140字が、短歌の31文字に移行するのも時間の問題だったという。

「ほぼ同時期に歌集を出された上坂あゆ美さんと、毎回あるお題を短歌にする『生きるための短歌部屋』という場を設けているんですけど、短歌を作ることは1日をよりよく生きることと密接に繋がっている気がします。生きるためが先か、詠むためが先かは微妙ですけど、日々をよく生きることといい歌を作ることは、ほぼイコールなんです」

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン