──キャビンアテンダント(CA)を中心に現在、異業種約300社に1700人が出向しています。今後の出向者の復帰や採用の予定は。
芝田:まず、受け入れ先の企業様と、出向者のがんばりに感謝したい。そして出向者には、“新しい風“を吸収して帰ってきてほしいと願っている。外部で得た知見やスキルは復帰した際に当社の業務にも反映できるでしょう。
出向者は、誤解を恐れずに言えば“出稼ぎ”により生産力の調整をしてもらっているわけですから、機材のやりくり同様、人材面の需給調整も需要回復が本格化し次第、呼び戻していきたい。そのためにも、しっかり黒字を見据えた予算を作り上げます。ただ、現状ではまだCAの余剰感が若干あるので、新規採用のほうはもう1年見送ることにしました。
3ブランドでニーズを総取り
芝田新社長は東京外国語大学出身で、在学中に2年間休学して北京の日本大使館で働いた経験もあり、英語、中国語を自在に操る。全日本空輸(以下ANA)が国際線の定期便を就航させたのは1986年だが、芝田氏は就航先となるワシントンD.C.や北京の支店開設準備、交渉などに奔走。その後も海外エアラインとのアライアンス業務、ロンドン支店長やアジア戦略部長などを歴任し、「入社以来、何かしら国際線に関わる仕事にずっと携わってきた」という社内きっての国際派である。
──去る3月8日、ANAやLCC(格安航空)のPeach Aviation(以下Peach)に続く、第3のエアラインブランド、Air Japan(以下AJ)を発表した。3社の連携や棲み分けはどうなりますか。
芝田:就航は事業環境を鑑みて2023年の後半と当初の構想より後ろ倒しにしました。Peachは香港など3~4時間圏内の都市をカバーしますが、今後は東南アジアやオセアニアなど7~8時間圏内の訪日需要をさらに喚起したい。そのために、従来から中距離路線向きのボーイング787型機を運航していたAJを活用することにしたのです。
PeachとAJは完全に棲み分けできますが、フルサービスキャリアのANAとAJは切磋琢磨して、お客様の選択肢を広げてほしい。多様化しているニーズを、ANA、AJ、Peachの3ブランドで総取りするつもりで各社、踏ん張ってもらいたいと思います。
AJは、できるだけPeachに近い価格設定をしたうえで、食事をはじめとした有料機内サービスは、お客様にトッピング式に選択していただくような尖ったサービスを考えています。
一番こだわったのが座席仕様で、東南アジアに就航しているエアライン各社の状況や搭乗されたお客様の声を、つぶさに調査してきました。一度乗ったらまた乗りたくなる、そんな座席の仕上がりになると思いますので、ぜひご期待ください。一方で、コストセーブに関してはPeachが培ったノウハウを活用していきます。