■大奥のような女官ライフ
一方、ヒロインの女官の世界は、江戸時代の大奥のような感じ。朝鮮時代の女官は600人ほどいたという。華やかに見える宮で働く女官は、庶民たちの羨望の対象にもなっていたが、地獄のような縛りもあった。
「全ての女官は、王様の女である」。他の男と結婚するのはもちろん禁じられ、他の男と愛し合ったのがバレたら相手の男も女官も死刑。これは女官を辞めても適用されるルールであるため、一度女官になった人は一生家族を作れず、死ぬまで一人で過ごさなければならなかった。
10才前後の女の子が女官練習生として宮に入っていたという。女官になると、衣食住の心配はなく、この時代にしてはかなり守られた生活を送れていた。そんな女官たちが願っていたのは、王様に選ばれ関係を持つこと! そうすれば、女官ではなく王室の人として生きることができる。息子を生んだら、王妃になれる可能性だってある。
王と女官は書庫で出会い、そこから距離が縮まっていく。(c)2021MBC
朝鮮時代、女官が王室の人になるのはそれほど珍しいことではなかった。にも関わらず、イ・サンとドクイムの関係が切ないラブストーリーとして韓国の人々に愛されている理由は・・・・・・ドラマを見れば、きっと納得するはず。
残された歴史記録から、王がドクイムをいかに愛し想っていたことは知ることができる。しかし、女官のことを記録している書物はほぼない。ドクイムが読書好きで賢く性格もとてもよかったのは記録されているが、どんな愛を王に対して持っていたのかは、誰もわからない。
このドラマの原作となる歴史小説では「王は女官を愛した。女官は王を愛したのか?」という問いかけから始まる。その答えを探していくのもひとつの楽しみ方かもしれない。
最後に、日本から韓国への観光が自由に行える日がまた来た時には、いつか訪れてほしいおすすめスポットがある。京畿道水原市にある「水原華城(スウォンファソン)」。イ・サンが建築した城だ。
日本でも東京への機能集中が問題になっているように、この時代、ハンヤン(当時の首都、現ソウル)がそうだった。イ・サンは水原(スウォン)に城を建築し、都市機能を分散しようとした。そして、いずれ自分はこの城で生きようとしていた。しかし、その願いはイ・サンが40代で生涯を終えてしまったことでかなわなかった。
世界遺産にも登録されている水原華城は散歩にも最適なので、ドラマを見て、王と女官の時代に思いを馳せながら歩いてみてほしい。
(c)2021 MBC /KNTVにて4月16日(土)放送スタート。毎週土20:00~22:30 ※2話連続放送
【プロフィール】Soozy/映像クリエーター/1988年、韓国生まれ。小さいころから日本が大好きで、高校卒業と同時に日本へ留学。2年間日本語学校に通い、慶応義塾大学環境情報学部入学。卒業後、映像制作の仕事に就く。ドラマの力で日韓の架け橋になれたらと発信中。Instagram:sooooozy12