東海林:説得して、一緒に上がったの。細い階段を3階まで上ったら、組長が椅子にどっしりと腰掛けて、「おう、よく見てるよ」って。組長が使うトイレって興味あるじゃない? 本当にトイレに行きたくなって、「すみません、お手洗いを貸してください」とお願いしたら、「俺のを使いなさい」って言われて。四畳半ぐらいの大きなところに便器があるのよ。もし漏らしたらどうしようかと思って(笑)。
前田:すごい話だな。
東海林:なんとか漏らさずに出てきたら、指を詰めた人がコーヒーを持ってきたのね。そしたら、ディレクターが「ちょっと下の様子を見てきます」って(笑)。「ここにいなさい」って注意したの。でも、結局ボツになった。やくざの盃の儀式を撮りに行って、インタビューもしたけど、それもオンエアされなかったわ。
前田:当たり前でしょ(笑)。全国放送できるわけないよ。誰だよ、指示したディレクターは。
東海林:ちょっと面白い人がいたのよ。
(第2回につづく)
【プロフィール】
東海林のり子(しょうじ・のりこ)/1934年生まれ。事件・芸能レポーター。立教大学卒業後、1957年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。1970年退社後、『3時のあなた』『おはよう!ナイスデイ』(ともにフジテレビ系)などの番組でレポーターとして活躍。
前田忠明(まえだ・ただあき)/1941年生まれ。芸能レポーター。 明治大学卒業後、1970年光文社「女性自身」の記者として入社。1980年フジテレビと専属契約を結び、『おはよう!ナイスデイ』『TIME:3 タイムスリー』(ともにフジテレビ系)などの番組でレポーターとして活躍。
【聞き手・構成】
岡野誠(おかの・まこと)/1978年生まれ。ライター。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記 1979-2018』(青弓社)がある。執筆記事〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞に。
※週刊ポスト2022年4月29日号