掴みどころのない金総書記のリーダー像に困惑(AFP=時事)
この最後のシーンなどは、昭和の刑事ドラマ『Gメン’75』(TBS系)のタイトルバックを彷彿とさせる。ドラマでは、陽炎揺らめく滑走路を刑事たちが横一列に並んで歩き、そこに「熱い心を強い意志で包んだ人間たち」というナレーションが流れていた。今の金総書記自身がアピールしたかった自己像は、そんな昭和のイメージだったのかもしれない。
それから約半月後の4月11日、平壌で80階建てのタワーマンションを含む集合住宅の竣工式が行われた。景気が回復したわけではないだろうが、ミサイルを次々と打ち上げ、高級住宅を建設していく北朝鮮。式に出席した金総書記は、祖父の金日成国家主席を連想させるような特徴的な形の帽子をかぶっていた。やはり祖父、父が築き上げたリーダー像を継承し、これまで以上にわかりやすい形で、崇拝される対象として自身を偶像化、神格化していきたいのだろう。
そこには国民を気遣い、寄り添うリーダー像の強化強調も含まれるのだろうが、冒頭で記した看板アナウンサー、李春姫さんとの手つなぎ映像を見る限り、示したいリーダー像がよく分からなくなった。
金総書記は、自ら設計したというメゾネットタイプの豪華な住宅を李さんに贈った。長く国に尽くしてきた功労者を労う、大事にすることで、人々の忠誠心を高める狙いがあるというのは分かる。だが、嬉しさのあまりなのか、李さんは金総書記の手を両手で握ったり腕にしがみついたり、べったり甘えたようなその姿はやり過ぎ感満載だ。こんな映像流していいのか?と思うのだが、金総書記は終始ニコニコ顔。記念写真では李さんともう1人の女性が金総書記を挟んで座っているが、2人とも金総書記の腕に自分の腕をからめている。
はて、この映像にはどんな意図があるのか、何を狙ったのか?親しみやすか優しさか、北朝鮮という国はやっぱり分からない。