「父にはあえて言わなかった」
同じく3年前に前立腺がんを患った演出家の宮本亞門(64)が語る。
「テレビ番組の企画で人間ドックを受けた後、『すぐに再診察を』と連絡がきました。『レントゲンを撮りたい』と深刻な声で言われて。テレビ局には『重大な病名が出たら無理に追いかけません』と言われたのですが、撮影を続けてもらいました。やはりがんでした。
でも、90歳を過ぎた父にはあえて言わなかった。いつも『長生きできるよ』と声をかけて父を支える側の僕ががんになったら、父が僕以上に落ち込むことは目に見えていたからです。事務所のスタッフにだけ相談して、検査を進めました」
結局、宮本が医師からがんを告知された瞬間についてはオンエアされなかったが、前立腺がんの精密検査のシーンまで撮影が行なわれたという。
「検査後、がんのステージが判明するまでの1週間は魔の不安定期で、死について考えました。21歳の時に母が死んで、自分もタイで交通事故に遭って死にかけているから、怖くはない。でもこの時はさすがに孤独で、『ひとりだけ宇宙の遠くに投げられていくのかな』と。そう考えると、周りのみんなの愛おしさが増すばかりでした」(宮本)
結果は、「前立腺がんのステージ2~3」だった。転移が危ぶまれたため、すぐに手術が必要と診断されて全摘手術を受けたが、その後の経過は良好。「3年経ってもまったく問題ない状態で、脂ものを摂らないように気をつけています」と宮本は語った。