(c)テレビ朝日 座敷童子は世話好き寮母、酒呑童子はオークション会社勤務、ぬらりひょんは弁護士兼経営コンサル、お岩さんはナース、とそれぞれの現世での役割の設定も絶妙
「『もっともっと』の欲にはキリがない」
「美の価値観は時代や流行でくるくる変わる。そんなものに流されてどうするの?」
「本当の美しさは、生き方が決めるもの」
「いじめられたら逃げましょう」
名言と言っても良い数々のセリフが、ドラマにちりばめられている。
ドラマの妖怪たちは現代社会でそれぞれ仕事を持ち、社会ルールにのっとって生活している。だから、「人も妖怪も、稼ぐ才能がなきゃ食っていけない」とまっとうなことを言うし、いたずらに甘い夢を見たりはしない。
経験豊富な長老を思わせる冷静な言葉には、説得力があるというものだ。
個性をポジティブに活かす術をドラマから見つけよう
さらに注目したいのは、女性蔑視の「ミソジニー」、見た目重視の偏見である「ルッキズム」など、社会問題に切り込んでいくストーリーだ。
こうしたテーマを自分目線で考えるのはなかなか難しいしピンとこないものだが、ホラーコメディという軽いタッチが、そのハードルを下げてくれている。
結婚に失敗し、不実な夫に復讐したお岩さんが「結婚が女の幸せとは限らない」と言うのは、さもありなん。
しかし、「不幸な女の負け惜しみだ」と酒呑童子に言われたお岩さんは引き下がらず、「そういう男の決めつけがミソジニーだって言うのよ」と言い返す。違和感のある発言に対して、毅然と意見する姿に溜飲が下がる。
妖怪たちは、人ならぬものという点を除けば、私たちの周りにいる個性豊かな“誰か”と変わらない。登場人物の誰もが、あなたであり、私なのだ。
主人公の澪は人の意見に左右されやすいが、裏を返せば相手の話を聞く耳をもっているということ。それは個性のひとつだし、長所とも言える。
多様性の時代、それぞれの個性を認め合いポジティブに活かせば、もう少しのびのびした社会になるのではないか。澪や妖怪たちを見ていると、そんな希望がわいてくるし、個性を活かす術を見つけられそうな気がする。