高画質にデジタル・リマスターされた旧作映画を観る際、記憶にある映像と異なって感じることがある。ただ、その感じ方は一通りではない。「前に観た時はもっと暗くて深みがあった気がするけど、なんだか明るくなっているな」となる時もあれば、「前は劣化・退色していたのが、見事に復元されているぞ」となる時もある。その違いは何なのか。映画史・時代劇研究家の春日太一氏が、東映ラボ・テックの根岸誠氏に話を聞く。
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根岸:デジタル・リマスターの考え方は根本的には二通りあります。
一つは、つくった当時の色合いを可能な限り再現するという考え方。もう一つは、当時つくったものを現在の視聴者に気持ちよく見てもらうという考え方。このどちらを選択するかは、供給する側が考えるわけです。
――DVDメーカーや映画会社の方針次第で決まるわけですね。
根岸:それは私どもの立場では決められることではないので、「どちらが希望ですか」と尋ねるところからスタートすることになります。
――もともと暗い映像の作品だったのが、リマスター版を見たら、別物かと思うくらい明るくなっていることがあるのですが、それは現代の視聴者に見やすくするためというのもある、と。
根岸:たとえば製作当時は、画面を暗くすることが確かに目的ではあったと思うんです。だから、当初は撮影当時に狙った通りに上映しているので暗いんですよ。
でも、DVDを出す頃には暗い部分を明るく見せる技術ができました。ですから、明るく見せようと供給側が希望をすれば可能になったということです。メーカーだけでなく実際に撮った監督さんやスタッフさんにご意見をうかがい、見せ方を調整することもあります。
――東映の旧作をリマスターする基本方針はどちらですか?
根岸:そのへんは私どもの技術者の立場から言うと、正直よくわかりません。作品ごとに「この作品って、どんな感じでいきますか?」と聞いていますね。