フランクリン・D・ルーズベルト(写真中央)
昭和の日本はアメリカとの戦争に敗れ、同盟国となることで国際秩序のなかで生き延びてきた。しかし戦後80年を迎える今、自国主義を掲げるトランプ2.0のアメリカが姿を変え始め、改めて日米関係の行方が問われている。「昭和100年」を振り返り、未来への教訓を探る━━元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏と思想史研究者の片山杜秀氏が徹底討議した。対談内容をまとめた書籍『生き延びるための昭和100年史』より、一部抜粋、再構成して紹介する。【全3回の第1回】
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佐藤優(以下、佐藤):昭和という時代はアメリカが覇権国家となった過程に重なります。
片山杜秀(以下、片山):第一次大戦でイギリスに代わってアメリカが世界の覇権を握り、対米戦争に突入するのが敗戦までの20年ですね。
佐藤:そして戦後80年を通じて日米関係は最重要課題であり続けましたが、現在アメリカは覇権国家としての役割を自ら放棄しようとしています。
片山:はい。第2次トランプ政権は盛んに関税カードを切る保護貿易主義をはじめ、アメリカ・ファーストを掲げています。
佐藤:一昔前まで「理想の国家」のモデルだったアメリカに格差や分断が拡大し、今はモデルとは考えられません。混迷の時代だからこそ、日米関係の歴史と今後を検証する重要性は増しています。
片山:同感です。まず第二次大戦から振り返ると、当時のフランクリン・ルーズベルト政権下のアメリカは全体主義と言われていた。ニューディール政策は一種の計画経済で、アメリカ版社会主義でした。しかし、世界恐慌から経済を回復させられず、軍需景気に頼っていく。