「スイスは全国民を対象に軍事訓練が課されるなど、自力で敵を食い止めるという思想。どの国の味方もしないし、利用させない覚悟が決まっている。それと比べると日本は“アメリカ任せのいいとこ取り”と言われても仕方ない。海外で設置されている公共の核シェルターでは、平時には音楽会開催など多目的利用をしている。日本もまずは公共施設から設けていくべきでしょう」(福山さん)
核シェルター販売実績日本一を誇る「ワールドネットインターナショナル」代表の中嶋広樹さんも民間の苦悩があるという。
「各国の核シェルターの設置率は政府が国策としているかどうかによります。私たちの会社がどんなに販売をがんばっても、数パーセントさえ普及させることはできません」
国民の命を守るインフラだからこそ、国が責任をもって設置を進めるべきだろう。日本大学危機管理学部教授の小谷賢さんもこう言う。
「日本は“核戦争など起きない”という前提で動いている。スイスのように設置を義務づけたり補助金を出すなど、政府が音頭をとって設置を進めなければ、取り返しのつかないことになりかねません」
ウクライナ戦争で、世界のさまざまなリスクが浮き彫りになった。この教訓を生かせなければ、私たちが放射能や毒ガスにさらされることになるかもしれないのだ。何より、核シェルター設置によって国民の危機意識を一気に上向かせられる。そうなれば日本が「平和ボケ」という悪名を返上できる日が来るかもしれない。
※女性セブン2022年6月2日号