そもそも現行の侮辱罪は、明治時代に作られたものだ。インターネットの普及した現在とは全く状況が異なる。SNSで拡散されれば昔とは比べものにならない数の人々や場所に届き、これまでの罰則では被害の大きさに見合わなくなった。書き込みは一瞬でできるが、どんなに時間をかけてもその被害回復はできないこともある。
木村響子さんは衆議院法務委員会で侮辱罪厳罰化の参考人として意見陳述した(4月26日)。花さんを失った後、響子さんは「end the hate」を目標に掲げ、2021年8月に「NPO法人Remember Hana」を立ち上げた。署名や講演を通し、誹謗中傷を終わらせていく活動を行っている。
陳述では、遺体の横で何百もの誹謗中傷の書き込みを読み、証拠を集めなければならなかったこと、そのストレスのために文章を読んでも理解できなくなったこと、訴訟に1000万円以上かかったことなど、被害者の苦しい立場について訴えた。
池袋暴走死傷事故・遺族の松永拓也さん。
この国会参考人承知に同じ想いをもつ立場として同行したのが、池袋暴走死傷事故・遺族の松永拓也さんだ。妻・真菜さんと長女・莉子ちゃんを失い、交通事故をなくすために活動を続ける松永さんも誹謗中傷の被害を受けている。
「金や反響目当てで闘っているようにしか見えない」などと松永さんのSNSに誹謗中傷の書き込みをした男性が4月に書類送検された。
こうした誹謗中傷問題について、「NPO法人Remember Hana」と松永さんが副理事を務める「一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会(通称あいの会)」による意見交換会も行われた(4月24日)。
登壇者は「Remember Hana」の木村響子さんと弁護士の佐藤大和さん、「あいの会」の松永拓也さんと代表理事・小沢樹里さん。「あいの会」は交通事故遺族の悲しみの共有の場として設立された団体で、命の重みや事故被害者支援についてメディアや各省庁に対して啓発活動を行っている。
「一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会(通称あいの会)」代表理事・小沢樹里さん。
自身がSNSでの誹謗中傷を経験し、誹謗中傷に関して活動を始めることを決意した松永さんから、響子さんに「何か一緒にできないか」と声をかけたことから、この意見交換会の開催が決まった。
木村さんは「松永さんとお話ししたときに、すごく目指す方向が似ていると感じましたし、ともに声をあげていくことで、たくさんの人の心に届いたらいいなと思ったんです」と話す。