侮辱罪の厳罰化というと、必ず持ち上げられるのが「言論の自由」だ。「言論の自由が『言う権利』だとしたら、言われるほうの権利も同じように守られるべきではないでしょうか」と響子さん。その上で、権力者による言論封じや言葉狩りが行われないようにする必要もあると語った。
誹謗中傷への理解不足は、警察や弁護士に相談したり、裁判になったときにも問題になる。苦労をして裁判にこぎ着けても、裁判官ごとに違う判決が出る「裁判長ガチャ」のようなことが起きている。
響子さんが花さんへの誹謗中傷について、警察に相談したときのことだ。ニュースになる前と後では警察の対応がまったく違った。
「最初に対応してくださった警察のかたは『罪には問えないし、できても侮辱罪や軽犯罪だ』と言われました。でも花のことがニュースになったら、警察から連絡があって、別部署で捜査をしてくださることになったんです」(響子さん)
担当者や世間の状況によって対応が変わるのは、大きな問題だ。専門家によるガイドラインを制定し、一定の基準をもって適応してほしいと登壇者たちは口を揃える。
司法の場で議論を深めると同時に必要なのが、教育だ。
「インターネットというものに対して自分の子供が被害者にも加害者にもなりえるけれど、どう教えたらいいのかわからない、という保護者の方の声を多く聞きます。厳罰化があって、それだけではなく、子供たちにわかりやすく教えていく。そして保護者の方に伝えられる制度や機会を作っていきたいと思います」(小沢さん)
「Remember Hana」では、小学校から高校、社会人と広い年齢に向けて、SNS教育にも力を入れている。
「『こういうことはやめよう』とか『これはダメだよ』と言うのではなく、『みんなでまず一緒に考えよう』から始めて、『なんでそんなひどいことを言ってしまうんだろう』『批判と誹謗中傷の違いってなんだろう』ということをみんなで考えていきます」(響子さん)