国内

自転車旅行で1か月捕まらなかった逃亡犯 スマホ待たず、デジタル捜査の裏をかく結果に

野宮受刑者が潜伏した空き家。屋根裏にはテレビが置いてあったという(共同通信社)

野宮受刑者が潜伏した空き家。屋根裏にはテレビが置いてあったという(共同通信社)

 孤独な女性刑務官と、懲役75年の判決を受けて服役中だった男の逃避行は、11日目に終わりを迎えた。若き凶悪犯ケイシー・ホワイト受刑者(38才)と、彼に恋をした看守のビッキー・ホワイト刑務官(56才)。ふたりは4月29日、米アラバマ州の刑務所からパトカーで堂々と脱獄した。トラックに乗り換えると、州外に走った。北に向かって、テネシー州、ケンタッキー州を越えて350kmを走ったが、ついにインディアナ州で警察に発見された。

 ロマンスの結末を悟った看守のビッキーは、捜査車両とのカーチェイスの最中に、拳銃で自分の頭を撃って、絶命。車を降りて、両手を上げたケイシーは「私の妻を助けてくれ!」と叫んで逮捕されたという。勤続20年の真面目なビッキーは、わずか2週間にも満たない“新婚旅行”のために、残りの人生を失った。脱走の“魔力”にとりつかれた男女の、ドラマのような現実の話である。

「日本では基本的に、刑務所には男性刑務官、女子刑務所には女性の刑務官が配置される。受刑者と刑務官の間で恋愛問題が起きたというトラブルは聞いたことがありません」

 そう語るのは、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』(小学館新書)を上梓したばかりのフリーライター、高橋ユキさんだ。同書には、近年、新聞やテレビで騒がれ、私たちの記憶に新しい逃亡犯たちが何人も登場する。

 2018年に大阪府富田林署の面会室のアクリル板をずらして逃げ出し、自転車旅のサイクリストを偽装して1か月以上も捕まらなかった山本輝行受刑者(当時30才・仮名)や、同年、愛媛県今治市の塀のない松山刑務所(大井造船作業場)から脱走して島に潜伏、さらには瀬戸内海の尾道水道を泳いで渡った野宮信一受刑者(当時27才・仮名)などだ。

「逃亡犯に取材をする中でいちばん印象が強かったのは、富田林署から逃げた山本です。彼は口がうまくて、ある意味では自分を客観視できる。相手が望んでいる『自分の姿』を察知して、演じることができるというのでしょうか。その“能力”が彼に長期の逃亡を可能にさせたのだと感じました」(高橋さん)

逃亡を可能にしたいくつもの偶然

 山本は、警察署から脱出して48日間にわたって逃げることができた理由を次のように説明している。

《壁を作らずに地元の人と積極的に話し、スマホに頼らないこと。スマホを眺めていれば、会話の機会を逃し、旅先の風景も見逃してしまう》(『逃げるが勝ち』より、以下《》内は引用)

 たしかにその動きは、奇妙なほど“フレンドリー”だった。警察署を脱出した後、盗んだ自転車をこいで四国に向かった山本は、日本縦断中のツーリストを装い、愛媛県庁の自転車新文化推進課に自ら足を運んだ。もちろん、顔は隠していない。

「山本は“日本一周をしているようなプレートを作れないか”“サイクルマップはないか”と相談したそうです。快く応じた県職員は、彼に『日本一周中』と印刷されたプレートと、サイクリング用の地図を提供しました」(全国紙社会部記者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン