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和田秀樹氏 認知症は誰にでも起こりうる老化現象、「怖がりすぎることはない」

近著『80歳の壁』、『老いが怖くなくなる本』が話題の和田秀樹氏

近著『80歳の壁』、『老いが怖くなくなる本』が話題の和田秀樹氏

「80歳を超えて元気で過ごすには、“我慢をやめる”ことが大切です」。そう指摘するのは、高齢者専門の精神科医としてこれまで6000人以上を診察し、近著『80歳の壁』(幻冬舎新書)や『老いが怖くなくなる本』(小学館新書)が話題となっている和田秀樹氏だ。

 内閣府の「平成29年度版高齢社会白書」によると、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を患うと予測される。ただ、和田氏は「認知症を怖がり過ぎることをやめたい」と語る。

「私は年間100体ほどの遺体の解剖結果を見てきた時期がありましたが、85歳を過ぎた人の全員の脳にアルツハイマー型の変性が見られます。つまり、認知症は“老化現象”ととらえられる一面があり、歳を重ねると誰にでも起こる症状なのです。過度に怖がるのではなく、認知症になることを前提にして、発症をなるべく遅らせることです」

 そうした前提を踏まえ、和田氏は「運転免許の返納」に慎重な考えを示す。

「筑波大学が約2800人の高齢者を対象に2019年に行なった調査の結果によると、運転をやめた人は続けた人と比べて、認知症などで要介護認定を受けるリスクが2倍以上に高かった。高齢者の運転免許返納が推奨されていますが、運転をやめて外出の機会が減り、人や社会との交流が少なくなるほうが健康へのリスクも大きい。75歳以上のドライバーへの認知機能検査が始まりましたが、実際は全年齢で事故は起こっています。検査を実施するなら、すべてのドライバーに受けさせないのは差別でしょう」(和田氏)

 一方、歳を重ねると寝付きが悪くなり、睡眠不足と認知症発症の関連性も指摘されている。しかし、和田氏は「眠れないなら無理に寝なくてもいい」と語る。

「睡眠障害の治療のために睡眠導入剤を服用する人が少なくありませんが、薬による転倒や認知機能障害といった副作用のリスクのほうが怖い。高齢になるほど運動量が減るので疲労が少なく、睡眠時間は減ります。昼寝をするなど眠くなったら眠ればいいのです」

 80歳を超えたら老いや体の不調を受け入れる。そのうえで「新しいことややってみたいことにどんどんチャレンジして、頭と体を使い続けることが認知症予防にもなる」と和田氏は語る。

 何歳になっても元気でいるために、「やめるべきこと」は多そうだ。

※週刊ポスト2022年6月24日号

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