芸能

「インティマシー・コーディネーター」の仕事は台本チェックから“徹底的に意思確認”

アメリカでインティマシー・コーディネーターとして活動するアッシュ・アンダーソンさん。自身も俳優だった

アメリカでインティマシー・コーディネーターとして活動するアッシュ・アンダーソンさん。いまはアメリカの撮影現場で活躍する。自身も俳優だった(写真はHPより)

 ここ最近、映像業界では性暴力の被害が相次いでいる。3月には映画『蜜月』の榊英雄監督(52才)から、「性行為を強要された」と訴える女性4人の告発記事が週刊誌に掲載された。榊監督は報道の一部を認め、謝罪している。

 そういった性暴力を防ぐ職業が「インティマシー・コーディネーター」だ。映画やドラマの撮影現場に第三者的立場として参加し、制作と俳優の間に立って、キスシーンやベッドシーンなど、性的なシーンの撮影を調整するのが仕事だ。

 インティマシー・コーディネーターの仕事がスタートするのは、台本の最終稿が出来上がってからだ。日本初のインティマシー・コーディネーターの西山ももこさん(42才)が説明する。

「撮影が始まる3か月前のこともあれば、直前になることもある。ただし、準備のために最低でも2週間は必要です。台本を受け取ったらすぐ読み込んで、該当するシーンを洗い出します」(西山さん・以下同)

 その後、監督に会って、具体的にどんな演出をしたいのか確認する。

「例えば、ト書きに『服を脱ぐ』とあっても、監督に確認すると“脱ぐのは上着だけでいい”ということもある。『2人、夜を過ごす』と書かれた後でシーンが変わり、『翌朝、ベッドで目覚める』とあれば、その間のイメージを明確にする必要があります。抱きしめ合うだけでいいのか、キスをするのか、疑似性行為まで必要なのか。監督が撮りたいイメージがわかれば、俳優に伝えて、どんな撮り方ならOKで、何が嫌かの意思確認をします」

 西山さんは俳優に、「舌を入れてキスをしてもいいのか」「乳首は見えてもいいのか」と細かく確認し、あいまいなシーンを具体化する。

「プロとはいえ、キスやセックスのようにプライベートなものを人前で演じるのは、精神的負担が大きい。本番の張りつめた空気の中、もともと聞いていなかったことが増えたり、されたくないことまでされたり、見せたくない部分まで撮影されたりすることも出てきてしまう。俳優側のNGも、作品のテーマや監督の説明で変わってきます。何がOKで何がNGなのかを明確にして、演技の流れを決めておくことがストレス軽減につながります」

 特に経験が浅い俳優にとって、性的シーンの撮影は重圧としてのしかかるという。

「現場で泣き出したり、逃げ出した女性もいたと聞きます。不安のある俳優には“演技の流れは私と監督で考えておくから、当日は気持ちだけ作ってきてほしい”と伝えることもある。ベッドシーンの喘ぎ声ひとつとっても、声を出すタイミングや大きさに悩むものです」

 インティマシー・コーディネーターがいない現場では、「セックスなんて、普段からやっているんだからできるはず」というスタンスで、性行為の撮影が進むこともあるという。

「アクションシーンには必ずアクションコーディネーターがいるのに、セックスシーンにはコーディネーターがいなかった。つまり、いままでは、性行為は誰でもできるというスタンスでやってきたのだと思います」

関連キーワード

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン