名古屋将棋対局場が新たに解説されたミッドランドスクエア(写真・時事通信社)

名古屋将棋対局場が新たに開設されたミッドランドスクエア(写真・時事通信社)

板谷一門 もう一つの悲願の実現も……

「板谷四郎九段、ご子息の板谷進九段が名古屋に『第三の将棋会館』を建てることを目標に、東海地区の将棋の普及に尽力されてきました。1970年には日本将棋連盟東海本部が設立されました。その頃は板谷将棋教室の奥座敷で公式対局も行なわれていました。しかしそれも長くは続かなかったようです。エネルギッシュに普及活動を続けていた板谷進九段は1988年、47歳の若さで死去。さらには中心人物であった父の板谷四郎九段も1995年に亡くなり、東海棋界は厳しい局面を迎えました。その後は板谷進九段の弟子である杉本昌隆八段(53)が名古屋在住の棋士として奮闘。地元の人々が地道に普及活動を続ける中で、大天才・藤井少年が現れることになります。

 将棋界ではひとりのスーパースターが今までの景色をがらっと変える瞬間がありますが、今回はまさにスーパースターの藤井竜王の存在が大きかったでしょう。板谷進九段は、藤井竜王の師匠である杉本八段の師匠なので、藤井竜王と板谷進九段とは孫弟子と大師匠の関係にあたります。東海地区の関係者の夢であり、また板谷一門の悲願の一つはタイトルを持ち帰ることでした。それはすでに板谷進九段の孫弟子である藤井竜王が実現しています。さらにまた、もう一つの悲願も実現しつつあります」(松本氏)

 もう一つの悲願は、関西(大阪)に続き「第三の将棋会館」を新設することだ。「名古屋将棋対局場」はその大いなる目標へとつながっていくことが期待されている。

「何にしても東京と大阪が拠点となるので、名古屋は都会ではあるもののハンディキャップがあるわけです。藤井竜王がプロになるまでは、小学生のときから大阪の関西奨励会に通っていました。親御さんにとっても大変な負担だったことでしょう。ゆくゆくは奨励会や将棋会館が東海地区にできたら、東海地方のさらなる将棋の普及につながることは間違いないでしょう」(松本氏)

 藤井竜王が切り開いた地元・愛知の公式対局の拠点は、いずれ「東海将棋会館」として大きく実を結ぶことにつながる一歩となるのだろうか。

 

 

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